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「私じゃなくてもいい」と思わせる、友だちが嫌だった

まーたアンタは子どもじみたことを言って!!!という感じかもしれないけど、わたしにとっては由々しき事態だった。

わたしには、すごく交友関係が広い友だちがいる。

明るくて快活でおもしろくて多方面に造詣が深くて。彼女と話すと、初対面だろうとみんなニコニコと打ち解けた。人を巻き込んで楽しませてくれるエンターテイナー。そのくせ読んでいるものや観ているものはめちゃめちゃサブカルで、根っからのヲタクで、何でも話を合わせられる。

彼女が卓にいると会話が弾む。明るい笑い声が響く。

わたしもアニメや漫画が好きだったので、あっという間に打ち解けた。大学時代はたくさんバンドを組んだし、彼女の部屋で何度も鍋を囲んだし、一緒にアニメを観たし、いろんなところに出かけた。実家にまでお邪魔した。親友と呼べる関係だった。

そんな関係性が少しずつ変わっていったのは、社会人になってからだろうか。同じヲタクであるわたしたちだったけど、性質は全然違う。明るい彼女と根暗なわたし。

どんどん飲み会に人を誘い、交友関係を広めていく彼女の隣でわたしは何だか寂しかった。わたしだけじゃダメなんだろうか、と。他の人もいなくちゃダメなんだろうか、と。

とはいえ、わたしはどちらかというとおとなしい性格なので、おもしろい人ではないのもわかっていた。だから、他の人と一緒にいたほうが楽しいだろうな、というのにも気付いていた。

今思えば完全に拗ねていた。わたしがいなくても彼女の世界は何ら変わらないし、誘いをうまく受け取ることができなくても困ることはない。

「今日飲める?」と突発的に来るLINEに「ごめん」と返しても、全然残念そうじゃないのが嫌だった。そうだよね。だって別の人を誘えばいいもんね。わたしが死んでも代わりはいるもの。そんな気持ちになった。

わたしじゃなくてもいいのかもしれない。

そんなモヤモヤを抱えながら、少しずつ疎遠になって久しいある日、彼女が結婚をすることになった。

そこで友人代表としてスピーチしたのもまたわたしの友だちだったわけだけど、その子の言った言葉がめちゃくちゃ胸に響いた。

「今日飲める?」というLINEに「ごめん」と返しても、「また今度」と言ってくれるのが嬉しかった。「また今度があるんだ」と。

そうなのだ。

彼女のLINEにはいつも、「また今度」という言葉があった。仕事が終わらない日。どうしても予定が合わない日。断ったとしても、嫌なそぶりひとつ見せずにそう言っておわる。

その、気楽に誘ってくる感じ。フットワークの軽さに救われていた。そしてわたしはきっと、自分から一度も言ったことがない。「飲もうよ」って。

誘いを断られるのは怖い。そう思ってるからこそ誘えない。思えばいつもわたしは誘われてばかりだ。

それなのに、わたしの、わたしだけの、と不貞腐れることの烏滸がましさよ。もう、本当にいろいろこじらせすぎていている。クソデカ感情を抱きすぎている。

学生時代のまま、変わらずにいることは難しい。当たり前だけどライフスタイルが変われば交友関係も変わるし、疎遠になっていく友だちも出てくると思う。

とはいえわたしは反抗期だった。ので、もう終わらせてもいいのかもしれない。勝手に拗ねててごめんよ。やっぱりわたしはあなたが好きだわ。

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