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思い出の欠片を取り出して、そっと眺める癖がある

特に未練があるわけじゃないと信じたいんだけど、たまに昔の記憶をがさごそと漁って取り出してみる癖がある。

大体、過去の記憶というのはみんな封じ込めていて、ガムテープでぎちぎちに閉じてあると思うんだけどあえてそのテープを引っ掻いて剥がしたくなってしまう。

ふとした瞬間に。

たとえば、眠れなくて思わずスマホを手に取ってしまう夜。「あの人は今元気だろうか」と思いを馳せたりする。

クリスマス用にライトアップされた駅前のロータリーを見ていると、わたしのために部屋を飾り付けて小さなクリスマスパーティーを計画してくれたあの日のことが浮かんでくる。

私は、大切な人ができたらかつて大切だった人のことは思い出さなくなるのかしらと思っていたらどうもそうではないらしい。

実際、ディズニーシーに行くと浮かんでくる顔が3人ぐらいいる。

記憶って、上書きできるようでできないんだなぁと思いながらアラビアンコーストのカレーを食べる。

でも、自分は結構この「パンドラの箱」というのを意図的に取り出してしまうほうだと思う。一度取り出したら、あんなこと…こんなこと…とタイムスリップしたように浸って、気付けば朝になっている。

戻れないあの日に思いを馳せるのはどう考えても時間の無駄だし、未練がましく思う。ましてや、それを意図的にするのはちょっとマゾっぽい。

そんなことをして迎えた朝に、なんとなく彼氏に「特に未練があるわけじゃないんだけど」と話したら、「わかる」と笑っていた。そうか、「わかる」のか。今が幸せだろうが何だろうが、戻れない過去を思うことや、戻らない人を思うことは。

戻れないと思うと、胸がきゅっとして苦しいけど、その苦しいのがなんか良い。映画のワンシーンを観ているみたいで良い。

誰しもあるんじゃないだろうか。そっと思い出を取り出して眺めてみることが。戻らないからこそたまに見てみたくなってしまう何かが。

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