病院の離職率について考えたこと~女性にとって最大の報酬は何か~
こんにちは。本日は病院の離職率の高さについて考えてみたのでそちらを記事にしたいと思います。
長年病院で働いてきて感じたことが離職率の高さ。クリニックでは経営方針でかなり差が出てくると思いますが、少し大きな病院であれば3年間継続して働くスタッフの方が少ないかもしれません。
需要の高い業界なので、転職のしやすさから離職率が高いという面もあると思います。しかし資格のない事務職であっても離職率はとても高い。
そんな中、あることに気が付きました。特に病院の事務職は管理職が男性、平社員が女性という構図になりやすいということ。規模の大きな病院やクリニックになるほどその傾向が強いようです。
病院事務は女性スタッフが多く、男性が少数。今は事務も看護師も男性が増えては来ましたが、特に事務はお給料の面からも、仕事の性質からも女性スタッフが多くなりがちです。ですので、産休育休を取得せず将来性が高く、「男だから将来責任ある立場に立ってほしい」という経営側の思いもあったりと、どうしても男性が昇進しやすい環境となります。
窓口に立つスタッフは女性が多いのに、事務長を始めとした経営にかかわる人は男性ばかり。管理者は男性、実働部隊の多くは女性。そして離職率の高い医療事務。そこにある法則があるように私は思います。以下の記事は私の偏見が多分に含まれてはおりますが、それを踏まえた上でぜひお付き合いいただければと思います。
離職率の高い病院の医療事務
病院の受付は病院に足を踏み入れたら真っ先に向かう場所、病院の顔です。コンシェルジュのような制服を着て、にこやかに保険証を受け取り、慣れた手つきで受付から会計までオペレーションを回す女性たち。このにこやかで優しそうで、でも実は全く思い通りに動かず文句が多く、ことあるごとに怒ったハチの群れのように集団となってブンブンと訴えを起こすスタッフに手を焼いている男性管理職の方は多いのではないでしょうか。
女性の多い医療事務の現場では、どうしても女性の感性が優位の環境になります。患者からのクレームを協力して対応する。困っていそうなら声を掛け合い、理不尽なことを言われ泣いてしまったスタッフがいれば慰めて共感する。共感する。これが最も大切な行為となってきます。
どんな時も相手の心を否定しない、まず共感する。
一方の管理者グループは男性が多い、男の感性が優位な環境となります。プロセスよりも結果が大事、言葉や共感よりスマートな解決案を手短に述べることを好みます。
この異なる感性がトラブルによりぶつかることになるとどうなるか。
慰め、共感、ねぎらいを求めている女性スタッフグループの気持ちを汲めない男性管理者が、スタッフのモチベーションを上げるため「スマートな解決案」「周りとの競争を促すような評価方法」というような手榴弾を女性グループの中に投げ込み、爆風をまともに受けた社員がいたく気持ちを傷つけられて辞めていくのを幾度となく目にしました。
管理者もスタッフのモチベーションを上げるため頭を捻り一生懸命考えているのですが、上記の感じ方の違いにより上手くいかないことが多くあるようです。
どうすれば不満を感じている女性社員のモチベーションを上げることができるのでしょうか。
訪問診療での事例~看護師に愛された生活保護の糖尿病患者~
話は医療事務から少し離れ、訪問診療で出会った患者さんの話になります。
とあるあばら家に住む高齢の男性Aさんは、重度の糖尿病を患っていました。妻に先立たれ、息子も病気でAさんより先に亡くなり、生きる意味を全く失っていました。
生活保護であばら家に住み続けていましたが、受け取った保護費はほとんど酒代に消えてしまい、薬は飲まず、まともな食事は用意できず、Aさん一人では生活はままならない状態でした。そのためケアマネージャーに怒られてばかりいました。
全くやる気なく、妻と息子がいる仏壇の前で寝そべっているだけの生活で、保護費もまともに管理できない彼でしたが、なぜか生活が窮地に追い込まれることはありませんでした。衣食住は守られ、世話してくれる人もいました。
彼はどうも女性の母性をくすぐる才能がある、愛嬌のあるキャラクターの持ち主でした。訪問にやってきた医師、看護師、ヘルパーさんの話をさえぎらず、少し微笑みながら聞き、最後には「ありがとう」を言いました。
ケアマネージャーに酒の飲みすぎを注意された時も「わかったよ」「ありがとう」と受け入れました(でも実際には飲んでいる…)
看護師が食事をしっかり取ること、薬をきちんと内服することを指導するときも、いかにも素直に頷き、世話されるがまま身を任せました(実際は言いつけを守らないのですが…)
ケアマネも看護師も、Aさんの世話をすればするほどAさんのことが好きになっていきました。担当の看護師はAさんの訪問看護の枠を超えて、何かとあれこれ世話をするようになりました。
食に困ることはありませんでした。Aさん宅の電子レンジが壊れた時は、Aさんが壊れたと一言も言ってないにも関わらず直ちに市の担当者へ伝えられ、新しい電子レンジが手配されました。
そのうち、Aさんは亡くなりました。身寄りもなく、目立ったことは何もない彼でしたが、ケアマネも看護師も彼の死に涙しました。
感謝されることが最大の報酬
私はこのAさんのエピソードに、モチベーションに関する重要な本質が見えるように思います。特に女性の感性や感覚においては、自分が世話するものから感謝されることが最大の報酬となるようです。Aさんは担当の看護師を何の抵抗もなく受け入れ、感謝しました。彼から「感謝」という報酬を得た看護師は、本来の訪問時間以外でも彼を気遣い世話するという、金銭面から見れば全く理屈に合わない行動まで自発的にするようになりました。
感謝され、頼りにされる。「ありがとう」「苦労かけるね」と労ってもらえる。そういった言葉を継続的にかけてもらい、大切にされているという感覚をもつことはボーナスの手当てを1万円多くつけるよりよほど価値を感じるのではないかと思います。
事務職こそ内発的動機づけが大事
男性にとっては女性グループのご機嫌をとるみたいで面倒だなぁと思うかもしれません。しかし、「大変なんです」と相談を受けた場合は決して「じゃあどうすればいいわけ?」などとは言わず、「そうなんだね、苦労かけるね」というように共感から会話を始めるようにしてみてください。
元来世話好きでお節介な女性たちは、「この人の役に立ちたい!」と思ってもらえれば通常業務のパフォーマンスが上がるのはもちろん、下記のような変化が起こる可能性が高いです
・何も言わなくても出勤したら入れ立てのコーヒーがデスクにおいてある
・机周りが整理されている
・バレンタインに大量のチョコがくる(お返ししなくても怒られない)
・掃除が行き届くようになる
・倉庫や物品庫が知らぬ間に完璧に整理されている
・指示していないのに欲しかった資料が先回りして作成されている
女性脳と男性脳の違いについては黒川伊保子さんの「妻のトリセツ」が大変参考になりました。妻だけじゃなく仕事でもかなり役に立つと思います。女性にかける言葉、共感をビジネススキルととらえて、ぜひ実践してみて下さい。