技術系だってビジネスを学びたい!私が検討した留学先
社会人9年目でJTCを退社して留学した「みりん(@milin_study)」です。
本記事では、技術系の方向けに、私が進学を検討した海外の大学院の情報を紹介します。同様のバックグラウンドで、ビジネス系を学びたいと考えている方の参考になれば幸いです。
私のバックグラウンド
日本の大学・大学院の理学系の学部を卒業しました。大学院は実験系の研究室、自ら観測した実験データを分析してまとめた結果を修士論文としてまとめました。そのときに、データ分析の面白さを感じ、大学院卒業後はデータを使ってビジネスに関わりたい、できれば商品開発に携わりたいという想いがあり、民間企業への就職を決めました。
新卒では、ある日本企業の研究員として就職したのですが、研究開発だけでは世の中の役にはたつことができないと実感。実際、研究開発の結果を事業会社の人に何度か紹介しに行っても、いつも「顧客は誰?ビジネスモデルは?」と研究員の私に聞いてくるのです。技術だけやってきた私は全く答えられませんでした。自分が携わった技術を世の中に広めるためには、もっと製品開発や経営・ビジネスのことを学ばないと駄目だと実感。ビジネスのことが学べる大学院で勉強することを決意しました。日本の大学院でも良かったのですが、どうせチャレンジするなら、いつかは世界中の人に使われる製品を海外で作りたいという気持ちもあり、海外就職を見据えて、海外留学を32歳のときに決めました。
社費留学の選択肢もあったけど…
会社の先輩の中には、技術をさらに極めるために留学している人もいましたが、一方で私と同じようにビジネス系を学ぶためにMBAやMOTのコースへ社費留学をしている方々もいました。そんな環境もあって、留学を検討するにあたり、社費留学も考えたのですが、当時勤めていた会社は年功序列。人事に相談したところ、管理職にならないと社費留学に応募する権利がないとの返答。仮に、(運良く)最速で昇進しても管理職になるには数年間待つ必要がありました。しかも、自分が最速で管理職になれる可能性も100%ではありません。多分に運の良さが関わってきます。私には、その待ち時間がもったいないと感じたので、社費留学を諦めました。
製品開発を志していた私(技術系)の留学先候補
留学先を検討するにあたり、製品開発やビジネスを英語で学べるところという観点で、まず学校や専攻の洗い出しを行いました。最初は、あまり海外の大学について知らなかったこともあり、会社の先輩が通っていたMBAやMOTと思っていたのですが、留学カウンセラーと話したり、留学イベントで卒業生に話をきいてまわった結果、具体的には下記のようなコースが留学先の候補として挙がりました。
Master of Business Administrator (MBA)
Master of Engineering Management (MEM)
当時、MOTのコースはかなり少なくなってきていたので、MOTは選択肢から外しました。
下記に、私が調べた範囲で学んだ、それぞれのコースの特長を紹介していきます。
Master of Business Administrator (MBA)
日本でいうと、経営学修士。グロービス経営大学院によると下記のように紹介されています。
実際にコースの内容も、経済学・会計・コーポレートファイナンス・マーケティング・ストラテジーなどビジネスに関わる広い分野の講義が行われていました。
学生のバックグラウンドも、色々な分野の方が集まるコースで、地域や学校によって違いますが、コンサル・ファイナンスなど文系の人が多いという印象を受けました。理系の人もマジョリティではないですが、何割かはいるという印象です。
私自身は、MBAに関してはアメリカかヨーロッパの学校を考えていました。元々技術系で、テクノロジーとビジネスを結びつけた分野を学びたかったので、自然とシリコンバレーなどがありテック分野にも明るい西海岸の学校を最初は検討していたのですが、アメリカの学校は一般的に若い学生をとりたがる傾向があると知り、どうしたものかなと悩みました。当時の私の年齢は32〜33歳。アメリカ西海岸のMBAは難しいかなと感じ、であれば、実際に一緒に働いてみて働きやすかったヨーロッパの文化を知るのも良いと考えて、比較的年齢層が高いヨーロッパのMBAを中心に出願を考えはじめました。
最終的には、イギリス政府の奨学金「チーヴニング奨学金」を頂いたことが決め手となって、私はイギリスのMBAに進学したのですが、実際に卒業して感じるのは、テックとビジネスにこだわるのであれば、やっぱりアメリカ西海岸の学校が良かったなと思います。実際に、その土地にいくと違いますが、ヨーロッパはファイナンスやコンサル、スタートアップに重きを置く学校はありますが、テックはやはり土地柄から弱いんじゃないかなと、いろいろな学校を見学・卒業して感じます。私のイギリスの学校にも、技術系の博士号を持っていて、MBAを経てVCになった先輩もいましたが、少数派でした。クラスメイトも技術系っぽい人はいましたが、あまり技術に明るい印象は受けませんでした。私自身は、MBA留学して、卒業生に会いに行ったり、クラスメイトと話す中で、すぐにそのことを痛感したので、アメリカ西海岸の学校にワンセメスターだけですが交換留学をしました。西海岸のMBA生は確かに年齢層は低かったですが、もともとシリコンバレーのテック系企業で働いていた人&志望している人も多く、自分と似たバックグラウンドの人が多く就職に関しては話が合う印象を受けました。西海岸で、卒業生や西海岸の企業とのネットワーキング、さらには西海岸の学校の選択科目で選べた製品開発の手法や、起業の疑似体験を通して、本来学びたかったことを学べるよう軌道修正を行いました。
まとめると、私の場合はヨーロッパの学校で経営学に関する基本事項を学び、西海岸の学校で自分が深めたかった専門性を学んだというのが正しい表現かもしれません。ただ、ヨーロッパの学校はコンサル重視のコースだったので、技術系でありながら、戦略立案などに深く関わることができたのは、結果的には、自分の強みを作る良い結果になったのかなと思います。
Master of Engineering Management (MEM)
こちらは、MBAとは違って、通常の大学院のコースになります。
私も留学カウンセラーの方に紹介を受けるまでMEMの存在を知らなかったのですが、MEMはより技術分野にフォーカスしてマネジメントを学ぶ学問のようです。Northwestern大学では、技術系の学生にとってはMBAに替わるキャリアパスとして下記のように紹介されていました。
実際にカリキュラム内容を見てみても、アカウンティング・ファイナンス・マーケティング・リーダーシップなどMBAと同じような科目が並んでいます。再びNorthwestern大学のカリキュラム(コア科目)を見てみると、下記のようなラインナップでした。
また、大学によっては、MBAの授業を受けることもできるようです。
比較的、多くの大学がMEMのコースを提供しているので、私立〜公立、オフライン〜オンラインまで選択肢が色々。大学のランキングや土地柄、さらには住みやすさも考慮しながら、いろいろな選択肢を考えらるのは魅力的です。また、授業料もMBAに比べると抑えめなのもメリットのひとつです。
例えば、下記のような大学がMEMのコースを提供しています。
Stanford University (MS in Management Science and Engineering)
MIT (Master of Engineering Management)
Duke University (Master of Engineering Management)
Northeastern University (Master of Science in Engineering Management)
Pennslyvania State University (Master of Engineering Management)
Dartmounth (Master of Engineering Management)
MEMプログラムはMBAに比べると授業料は抑えめといっても、やっぱり授業料はかなり高いです。そんな学生のために、奨学金も各大学で用意されているので利用しない手はないと思います。また、アメリカであれば競争率は高いですが、フルブライト奨学金という手もあります。
MBAを選ぶべきか、Masterを選ぶべきか?
かなり悩ましい問いだと思います。私も実際にどうするべきかを迷いました。私は、MBAとMEMのいくつかのコースを受験して、複数の学校から合格をもらい、最後までMBAとMEMのどちらのプログラムに進学するかを悩んでいました。
MEMも魅力的だったので、合格者イベントに弾丸で参加して、授業や校舎を見学し、在校生や未来のクラスメイトとも話をして雰囲気を掴むようにしました。結局は、欧州のMBAを選んだのですが、決め手はイギリス政府の給付型奨学金「チーヴニング奨学金」が決まっていたこと、MEMの学生は比較的若い年代(社会に出て2−3年働いてから大学院に戻っている人が多かった)が多かった点が気になったことです。
注意:ただし、30歳前後の在校生の話では、MEMの学生の年齢は若くてもみな精神的に大人で全く年齢の差を感じないとのコメントをもらいました。
実際のカリキュラムは、Masterのほうが、より特定の分野にフォーカスした授業構成になっていると感じました。将来も、ビジネスがわかる技術系として仕事に携わりたいと考えていたので、もしかしたら、技術系の知識に樹店を置きつつ、Managementの勉強もした方がキャリアのエッジがたったのかもしれないとは思います。
一方、MBAは学校にもよるのですが、学生の年齢層はMasterに比べると少しだけ高くなり、色々なバックグラウンドの人が集まっている印象を受けました。実際、クラスメイトも私のような技術系は少なく、多くがファイナンスやコンサルティング、マーケティング出身で、ちょっとしたカルチャーショックを受けました。学ぶ内容も、プロジェクトマネジメントやプロダクトマネジメント(製品開発)などの内容はありますが、技術的な内容は皆無。
MBAのコースでは技術的な知識を伸ばす機会は全くありませんでした。
また、就職面では、特に海外では職種によっては、MBAを持っていることを(望ましい)候補者の条件に挙げているところもいくつかの会社でみかけたので、そのような会社・職種への就職を希望する場合には、MBAの学位を持っていたほうがいいかもしれません。MBAを持っていても有利にはならないのですが、学位を理由に落とされないというだけです。一方で、特定分野(例えばComputer Science)の学位を持っていることを条件に挙げている会社もあるので、卒業後にどんな会社で、どんな職種で働きたいかを考え、その職種の募集要項を事前にチェックしておくといいと思います。
私が思うのは、就職先の要件や、キャリアパスによって、進学先を検討するのが良いかなと思いました。もし複数のプログラムに合格したのであれば、実際に足を運んだり、在校生と話をすることで、どのプログラムが最も自分が求めているものに近いかを確認することが良いのではないかと思います。
さいごに
今となってはどちらが正解だったかはわかりませんが、MBAもMEMもどちらも魅力的な学位であることには違いないです。応募時に必要な書類やエッセイの課題もかなり似ているので、技術系の方は、どちらも視野に入れながら、留学準備をすすめてみてはいかがでしょうか。
私の体験談が、これから留学を考えている方(特に技術系の方)の参考になれば幸いです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?