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センスのある人がもっているもの。

歌手はどんな音楽を聴くのが良いのでしょうか?

多くの歌手たちは、声楽曲やオペラなどを聴く機会が多いのではないでしょうか。好きな歌手のYouTubeや、これから歌ってみようと思ってる曲、今歌ってる曲などを聴くことも多いと思います。

私が生徒さんたちに勧めていることは、自分の楽器(声)ではない他の楽器の作品を聴きましょう!ということです。歌手であれば、1(声楽曲):9(器楽曲)くらいの割合で。それくらい他の楽器を聴く価値は大きいと思っています。

もちろん、素晴らしい歌手の演奏を聴いて、感化される経験も大事です。けれども、歌手に限らず、一流と言われる素晴らしい音楽家たちは、その楽器の持つ限界を超えたサウンドを持っています。

そこにあるのはサウンドです。もはや、声ではありません。器楽奏者でも同じことです。単にクラリネットの音、フルートの音、ヴァイオリンの音、というだけでなく、楽器の垣根を超えた『美しいサウンド』がそこには存在しています。

声なんだけど、アルトフルートのようなサウンド。声なんだけど、チェロのようなサウンド。他の楽器のサウンドのイメージが湧いてくるような声こそが、真のサウンドだと思うのです。

『良い声』ではなく『良いサウンド』を磨き上げていくことこそが、傑出した音楽家になっていくための条件であると思います。良い声の歌手なんていくらでもいます。そしていわゆる「センスがある!」と言われる人は様々なサウンドを聞き分けられる良い感性を持っている人だと思います。『聴く力、感じる力』がある人のことです。

他の楽器の演奏を聞くことで、より多彩なサウンドのイメージを自分の中に持てるようになります。それによって、センスが磨かれていきます。それだけでなく、音の出だしに始まり、音がどのように膨らんで、どのように終わるのか。ビブラートやトリルに至るまで、色んな表現をイメージすることもできるようになります。

例えば私の場合、チェロの演奏を聴いていると、こんな風に音を繋げたいな、響かせたいな、とアイディアが湧いてくることがあります。ビブラートやストレートトーンの使い方も納得させられます。ボーイングは呼吸のイメージそのものだし、それによって生み出されるサウンドの緊張感も、歌う時のイメージにぴったりハマります。

いくら素晴らしい技術を手に入れても、自分の中に表現したいサウンドのイメージが湧いてこないことには、それを生み出すことはできません。声や楽器はそれを表現するツールに過ぎません。それらツールを使って表現したいものは、どんなサウンドでしょうか?

他の楽器のサウンドに触れて、一緒にセンスを磨いていきましょう!

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