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漫画「海街diary」感想

今更?と思われるかもしれません

確かにタイトルは聞いた事がありました

映画化された時に話題になったのも憶えて
いますが、その時は食指が動きませんでした

当時の人気女優さんが出てるから煌びやかな
内容なんだろ?と思って敬遠していた自分を
殴ってやりたいです

読みたいと思うキッカケになったのが
「詩歌川百景」

たまたま深夜ラジオでスポット的にCMが
流れており、漫画喫茶で手に取り、何度も
泣いていました

しかも著者が何度も読んでいたBANANA FISH「吉田秋生」先生

巻末か何かに海街diaryから地続きの世界だと
知り、逆輸入的に読みました

結果

今、読んで良かった!いや十年後に読んでも今、読んで良かった!と思える作品でした

自分の経験や年齢、立場によって色んな読み方、心を刺激したり、もやもやしたり、感情を懐かしくも恥ずかしくなったり、素敵な作品
でした

鎌倉に住む三姉妹が腹違いの妹を引き取り、四姉妹で共同生活を始める物語です

もう大抵の方はご存知なので、この程度で紹介大丈夫ですよね

簡単に自分が刺さったポイントを三つに分けて書いてみます

①劇的に大きな事件は起きない

例えば奇跡の再会やドラマのような都合の良い話、殺人事件やトラウマになるような出来事は無かったと思います

しいて言うなら、腹違いの妹を迎え入れた事が大きな出来事でしょうね

それ以後は私たちの身近でも体験した事や噂話で聞いた事など、起こり得る近しい出来事に
思えました

恋愛、不倫、妊娠、出産、死別等日常と地続きの世界を丁寧に紡いで、何なら自分も登場人物と同じように許された、もしくはそういう感情もあるよね、と倫理的には正しく無い事でも
認められた気持ちを抱く作品でした

同じ一人の人物であっても観る人やタイミング、捉え方、影の辺り方によって違う見え方
も持つという事を改めて強く感じました

また、こちらの良かれと思う感情、行動が相手や周りにとっては、そうじゃない結果を生む事もあると随所で描かれており、もっと多面的に物事を判断する必要があると感じました

それも遠い世界の話でなく、日常のリアルに
近い誰もが経験した事がありそうな出来事
だからこそ自身に置き換える事が出来るの
だろうと思います

②感情の丁寧なグラデーション

作品の中でどの登場人物も少しずつ変化して
いきます

それは環境、感情、年齢、生活などありと
あらゆるモノが

例えば恋愛感情についても、好きという答えを導き出すまでをゆっくり丁寧に描かれています

だから腑に落ちるし、自分に置き換えて考える時間を与えてくれています

全9巻、普段の私なら3,4時間で読み終えます

ストーリー展開が気になる漫画であれば、
もっと早く読めるかもしれません

ただ海街diaryは1日に3巻が限界でした

ストーリーも気になるし、興味深いのですが、それ以上に内容が濃密で心で咀嚼するための
時間が必要だったからです

多分5年前に出会っていても受け止め方が
違っていたはずです

少しずつ、ゆっくりと変わっていく登場人物達の感情にふと読む手を止め、昔の自分の出来事を思い出し、あれは正解だったのだろうか、
独りよがりな行動だったかもしれない、など
自分の歩みも振り返る、そんな感情が芽生える作品でした

それも登場人物の感情や行動を、ゆっくり丁寧に変わっていく様に、心を重ねていたからだと思います

③白黒答えを出さない

作品中には事柄だけを切り取ると、酷い仕打ちのように受け止められる出来事もあります

その中でも「でもお父さん優しかったよね」であったり、全てを憎んでいる訳ではない、誰も悪くない、仕方無かったと飲み込む、あるいは飲み込もうとする場面もあります

少し私の家庭の話を書きます

私の父はアルコール依存症で暴れたり、母に
暴力を振るう場面も目にした事がありました

中学生の頃には父と同じ体格になると、その
言動には恐怖は無くなり、力ずくで止められるようになりましたが嫌いでした

離婚寸前にもなりましたが弟の言葉で父が
亡くなるまで家族でした

父は仕事や周りの事で心が弱り酒に呑み込まれた、そしてそれは本人や家族だけで解決できる問題では無かったと今なら分かります

そして小さな頃にキャンプや温泉、アスレチックなど家族で行った事を思い出して、全てが
嫌いだった訳では無いと考えています

弟はずっと父の事を最後まで、亡くなった後も軽蔑して葬儀や墓参りすら拒否しようとしていました、当時の年齢もあるのでしょう

逆に兄は大学で心理学を学び臨床心理士、公認心理師として病院に勤め、来年の4月から大学で教える立場になるそうです

それも父を見て、その道を選んだのでしょう

人間だから良い行いもすれば誤った選択をする事もある

作品の中の言葉を借りると雪山で急なクレパス(裂け目)に落ちるような事も日常でもあるし、常に寄り添っている「死」という概念をふと
振り返った時に、その顔を観て呑まれてしまう事もある、それは誰にもわからない

例えば、身近でも何で若くして重い病にかかったり、急に命を落とす事もありうる、それに
理由なんて無いのだと

憎んだり、愛したり、恨んだり、ふと良い思い出を振り返ったり、何が良くて悪いのか、正解か間違っているのか、そこに明確な答えは必ずしも無いのかもしれない、改めてそう思わせてくれる作品でした


長くなりました、本当はまだ咀嚼しきれておらず、明日に持ち越そうかとも思いましたが、
何とか終わりが見えてきました

映画も仕事しながら観ました

四姉妹が動いて楽しく冗談言っている会話で
何度も目頭が熱くなりました

仕事中で無かったら、何度も泣いていたと思います

まだまだ海街diaryからの詩歌川百景も楽しみですし、また海街diaryはこれから何度も読み直す事でしょう

そんな作品に今出会えた事が良かった、という事を書きたかった記事でした


最後までお読みに下さった方は特に心より感謝申し上げます

ありがとうございました


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