
星の涙と森の願い
昔々、広大な森の中に、動物たちが仲良く暮らす「星の森」がありました。その森には夜になると星が降るという不思議な伝説があり、森の住人たちはその夜空を見上げては、星に願いを込めるのが日課でした。
森には、小さなリスの子供「リリー」が住んでいました。リリーは、好奇心旺盛でいつも何か新しい冒険を求めて走り回っていました。そんなリリーには、一つ大きな夢がありました。それは、いつか夜空から星が降りてくる瞬間を見てみたいということです。
「お星さまが降りてきたら、どんなに素敵なんだろう!」
リリーは夜になるたび、星空に向かって両手を広げていましたが、いつも星は彼女の手の届かないところで輝いていました。リリーはそれでも諦めることなく、いつか星を手に入れると信じていました。
ある静かな夜のことです。いつものように星空を見上げていたリリーは、ふと森の中で強い光が瞬いたのに気づきました。リリーは驚いて光の方へ駆け寄りました。そこには、森の中心にそびえる大きな「願いの木」があり、その根元には小さな星のように輝く一粒の「星の涙」が落ちていました。
「これは……星の涙?」
リリーは驚いて、その光の粒をそっと手に取りました。それは温かく、まるで生きているかのようにリリーの手の中で輝きを放っていました。
「この星の涙は、きっと何か特別なものに違いない!」
リリーは、星の涙をどうすればよいのか分かりませんでしたが、その不思議な輝きに引き寄せられるように森の賢者「フクロウのウィズ」を訪ねることにしました。ウィズは何百年も生きていると言われる森の最も賢い存在で、森の住人たちは困ったことがあれば彼に相談するのが通例でした。
ウィズの住む大きな洞窟にたどり着いたリリーは、星の涙を見せながら言いました。
「ウィズ、これを見てください!森の中で見つけたんです。これは何か特別なものですか?」
ウィズは星の涙をしばらくじっと見つめ、低い声で話し始めました。
「これは……星が夜空で流れ落ちる時、特別な願いが込められた涙だ。星の涙は、願いを叶える力を持っているが、それには純粋で強い心が必要だ。」
リリーは目を輝かせました。
「じゃあ、この涙で私の夢を叶えられるんですか?星を手に入れることができるんですか?」
ウィズはゆっくりと首を振りました。
「星の涙は、自分のためだけに願いを使ってはいけないんだ。この涙が現れるのは、森全体が何か大きな問題を抱えている時だ。つまり、リリー、今この森に危険が迫っている。」
リリーは驚きました。
「森に危険?でも、森はいつもと変わらず平和に見えますよ?」
ウィズは真剣な表情で答えました。
「表面上はそうかもしれない。しかし、森の中心にある『願いの木』が弱っている。森の住人たちが願いをかけるたびに、その力を少しずつ失っているのだ。このままでは、願いの木が枯れてしまい、森全体が崩れてしまうだろう。」
リリーは驚きと恐怖で体が震えました。
「どうすれば森を救えるんですか?」
ウィズは答えました。
「星の涙を使って、森全体を救う願いをかけるのだ。しかし、リリー、お前にはその覚悟があるか?自分の夢を叶えるための願いを諦め、森のために使うことができるのか?」
リリーは黙って考えました。自分が長い間抱いていた夢と、今目の前にある森を救うための選択。彼女の心は揺れ動きましたが、やがて決意を固めました。
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