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新国立劇場、ロッシーニ「ウィリアム・テル」

「ウィリアム・テル」の原作はシラーであり、原題は「ヴィルヘルム・テル」である。
シラーと言えば、ベートーヴェンの交響曲第9番に用いられた「歓喜の頌」が有名であり、誰しもがよく知るところである。
さて、「ウィリアム・テル」は、スイスのルツェルン湖畔の風光明媚な土地を舞台としている。当時のスイスのその辺りはハプスブルク家の勢力下にあり、住民たちは領主の圧政下にあり、代官(悪代官!)による収奪により苦しい生活を送ることを余儀なくされていた。
元来、山間の素朴な地域に暮らすスイスの人々は極めて勇敢で、独立精神に富んでいた。
「ウィリアム・テル」は、そういう社会背景の元に描かれている物語である。
この物語で最もよく知られているシーンは、テルが息子の頭に置かれた林檎を矢で射るシーンであるのは言うまでもないが、オペラにおいてこのシーンは、第三幕の終盤に配置されていて、このオペラのクライマックスの一つを形作っている。
このシーンをきっかけに、テルが息子の頭上の林檎を見事に射抜いたことで勇気を得たスイスの民衆は圧政に立ち向かうべく立ち上がり、自由と独立を獲得する道を歩み始めるのである。
たいへん有名ではあるが、私自身は断片的にしか知らないこのシーンが、オペラの流れの中でどのように描かれるのか、演ぜられるのかがとても楽しみである。
フランス語版による原語版日本初上演の「ウィリアム・テル」は、昨日の11月20日(水)に、新国立劇場で、待ちに待った開幕を迎えた。

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