キャンプ、か
「ゆるキャン△」を見始めた。今更すぎるのかもしれないが、「イカゲーム」で疲れた心には丁度いい。
きっかけは友人が「面白いよ」と勧めてくれたことだった。先日会った際に布教活動をされ、まんまと見始めている。ちなみに、彼は全部見切ってしまうのが嫌で今までに見た話を何度も繰り返し、まだ最新話までたどり着いていないらしい。つくづく不思議な人だ。
このアニメを観ていると、いやでもキャンプに行きたくなるし、キャンプの思い出も蘇ってくる。特に思い出されるのは中三の時のことだ。
学校の行事で行ったキャンプは、アニメの中のそれとは似ても似つかないものだったが、テントを立てて寝袋で寝たことには変わりなかった。料理も皆でやって、とても楽しかったのを思い出す。
今思えば、不思議なものだ。勝手に分けられた班で、勝手に連れてかれたキャンプで、狭いテントの中、それでも何だかずっと笑っていたような気がする。
運の悪いことに、その日は雨だった。台風も近づいてきており、酷く強い雨が僕らのテントを打っていた。
最初の場所どりに失敗したと思われる我が班のテントは、強風に晒されながら何とか持ち堪えていた。雨の音は強く、薄暗いランタンの灯りよりも強い雷光が、時折テント内を照らした。
「これ、やばいんじゃない?」一人が言った。
「だって、ここみんなの場所よりちょっと低くなってるじゃん。雨が全部こっちに流れてきてるよ」
確かに、我々のテントは少し低い場所にあった。僕含めメンバー三人、全員そんなことを考える人間ではなかった。皆がそれぞれ思い思いに場所を決める中、「ま、ここでいいんじゃね?」くらいの気持ちで決めた我々のテントは考えられるがきりおよそ最悪な位置に立っていた。
「待って。これ下に川流れてるよ」もう一人が言った。
なんと、テントの下、凹凸のある地面の間を水が流れていたのだ。我々は戦慄した。
「寝たら死ぬぞ」と誰かが言い、「川の上で寝れるわけねえよ」と笑った。
豪雨と強風がひっきりなしに木々を揺らすせいで、いくら騒ごうが誰にも怒られなかった。深夜まで爆笑して、確かそれで疲れ切って眠った。
翌朝、テントから出て近くの調理場でミーティングをしている時、我々のテントが風に吹かれて倒れるのが見えた。また爆笑した。立てる場所が適当なら、立て方も適当だったのだ。
その後台風の接近によりキャンプは中止になって近くのホテルに移動した。結局一泊しかできなかったが、それはそれで楽しかったと今は思える。あんなキャンプができるのは、あの頃しかなかった。
逆に言えば、アニメに出てくるようなキャンプができるのも、今しかないのかもしれない。
次の休みは、テントを見に行くことに決めた。