Attitude.
ライブハウスの照明担当なんて、結構雑だ。やってる僕が言うんだから間違いない。そりゃそうだ、その日初めて聴いた曲なんか合わせられるわけないじゃん。事前に歌詞や音源を送ってくれたりしたらまあ少しはできるかもね。仲がいいとか、月一で出演とかしてるとかだと嫌でも曲を覚えるから初見よりはかなりマシになると思うけど。
そういう点で言うと、結構コピバンの方が照明は楽しい。知ってる曲限定だけど。PAも正直コピバンの方が「正解の音」がある程度分かるので方向性も決めやすいし楽しい(と同時に楽でもあるかも)。
自分の好きな曲だとキメも展開も頭に入ってるのでやりやすいし、「俺がこいつらをカッコ良くしてやる」という気持ちにもなる。図々しいけど。
世の中では大体オリジナル曲をやってるバンドの方がなんとなくちゃんと活動してるように見えるけど、意外とコピバンだって悪くない。むしろ、真剣にコピー/カバーをやってるバンドの方がそこいらの雑なバンドより余程ちゃんとしてたりする。
今までたくさんのバンドをみてきたけど、照明卓の前で思わず立ち上がってしまったのは一度だけだ。
特定を避けるために色々とぼやかすけど、普段は社会人の人たちが集まってライブをやるみたいな日だった。社内の同好会かなんかなのか、結構老若男女という感じで、上は定年間近くらいの人から下はほぼ新卒くらいの年齢までいる不思議なイベントだ。
何バンド目だったかなぁ。色んな曲を色んな人がやるから全然覚えてないんだけど、『BABY BABY』をやった人たちがいた。
もちろん、本家だったり本職のミュージシャンにはかなわないだろう。
しかし曲が始まった瞬間に空気が変わったのを肌で感じた。
編成は所謂普通の4ピースバンド。ドラム、ベース、ギター、ギターボーカル。立ち位置も普通。上手ギター、下手ベース。センターにギタボ。
スティックのカウントが四つ、そしてイントロが始まった。
ギターを弾く女性はおそらく20代の前半。新卒かな?くらいの年齢に見えた。その瞬間まで特段目立った様子はなかった。
しかし、イントロが始まった瞬間-僕が緑色の照明をつけたと同時に-彼女はまるでロックスターのように全身を揺らしながらギターをかき鳴らし始めた。
その笑顔とその動きがとても素敵で美しく、なによりかっこよくて思わず立ち上がりかけた。諸事情(スペースの問題)で本当に立ち上がると頭をぶつけるのですんでのところでなんとか堪えたが、全身には鳥肌が立っていた。
そうだよな〜、バンドってこういうもんだよな〜、と強く思った。Aメロが始まっても彼女はまるで日々の鬱憤を全てぶつけるかのようにギターをかき鳴らしている。
『パンクはスタイルじゃない。態度だ』
歪んだギターの音色がまるでその時が永遠かのように空気を揺らしていた。