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十四才

ハイロウズが好きだ。最初にハマったのはブルーハーツがきっかけだったが、いつの間にかハイロウズというバンドの音楽性に取り憑かれていた。

今日は自分の音楽史というよりは完全にハイロウズに特化した話を書こうと思う。自分の好きなアーティストへの好き度合いが高まるともうただ好きというよりかはもう完全にハマってしまって、ある種狂ったようになってしまうというのは誰しもあるものだと思う。大抵はその場合、有名でない曲に魅力を見出してしまって「いやー、ほんとはこっちの方がいいのよ」などと口走ってしまう。私もいくつかどハマりしたアーティストがあるが、ハイロウズはその中の一つである。

悪いが日曜日よりの使者の話はしない。先に書いたように私は狂ってるので、「それよりもこっちの方が」と思ってしまうのだ。だから例えば日曜日よりの使者の歌詞に出てくる「適当な嘘をついて その場を切り抜けて 誰一人傷つけない」というフレーズが松本人志を表してるだとか、ベスト盤FLASHのCMに松本が出てくるだとかそういう話はしない。いや、もうしてるけども。

さて、ハイロウズというバンドを語る上ではブルーハーツというバンドの話をしなくてはいけない。彼らのスタンスとしては「完全に別のバンド」という体をとっているわけだが、いかんせんメンバー5人中3人が元ブルーハーツという事になってしまっては言及しない訳にはいかない。

ブルーハーツというバンドは、基本的には4人で編成されていた。ボーカルのヒロト、ギターのマーシー、ベースの河ちゃん、ドラムの梶くんだ。その中のヒロトとマーシーがのちにハイロウズを結成するわけだが、彼らには幻の5人目が存在する。それがサポートメンバーとして活動していたピアノ奏者だ。「ブルーハーツにピアノ?」と思われるかもしれないがよくよく考えてみて欲しい、TRAIN-TRAINはピアノから始まるじゃないか。そしてその彼こそが5人中3人の3人目、ハイロウズで正規メンバーとして活躍する白井さんだ。

しかし、なぜブルーハーツでは白井さんはサポートメンバーだったのか?答えは一つだ。ブルーハーツは4人でブルーハーツだからだ。日本のパンクロックバンドとして名を馳せた彼らは4人で一つだった。だから正規メンバーとして彼を向かい入れる余地がなかったのだ。

さて、ブルーハーツが解散する直前のインタビューでヒロトはこう言っている。「もうブルーハーツでやることはやり尽くした」つまり、コンセプトが決められた2枚のアルバムSTICK OUT と DUG OUT で彼はもうやりたいことをやりきってしまったのだ。だから新しくハイロウズを結成した。音楽的に新しいことをやろうとした。それがハイロウズなのだ。

だから、と繋げるのは些か強引ではあるが、ハイロウズの楽曲はより音楽的に洗練されていると私は感じる。人によってはブルーハーツ時代のようなパワーがなくなったなどという人もいるが、とにかく私は音楽的に良いと感じるのだ。それに私はハイロウズでもヒロトやマーシーの書く歌にはパワーがあると思っているし、むしろその歌たちが洗練された楽曲に乗っかっていることで私にはより魅力的に映る。

「バームクーヘン」という曲がある。私が好きな楽曲の一つだ。その中でヒロトは「鳥は飛べるかたち 空を飛べるかたち 僕らは空を飛ばないかたち だらだら歩くかたち」と歌った後に「僕らは空を飛ばない代わり 月にロケットを飛ばす」「翼を持って生まれるよりも 僕はこの両手が好き」と歌う。そしてサビでは「たとえ でっち上げたような夢も 口からでまかせでもいい 現実に変えていく 僕らはそんなかたち」とまとめるのだ。わざわざこの歌詞の意味を一つ一つ考えていくなどという無粋なことはしない。ただ、この歌を聞いているだけで私は十分なのだ。

私は何より彼らの書く歌詞の雰囲気が本当に好きだ。言葉の選び方も、主題となるメッセージも、全て好きだ。いくつも好きなフレーズがある。例えば「即死」では「そうして僕らは立ってる 生乾きのパンツを履き 居心地悪そうにしてる ラララ」、「不死身のエレキマン」では「子供の頃から なりたかったものに なれなかったんなら 大人のフリすんな」、「いかすぜOK」では「最後の最後の最後の最後は きっと 笑っちゃう」とあげていけばキリがない。

ここまで読んでいただいた読者の皆さんには私がどれだけハイロウズに陶酔しているのかということが分かっていただけたとおもう。その上でぜひ「十四才」を聞いていただきたいのだ。これは完全に自慢であるが、私は自分が十四才の時にこの曲に出会えた。それからこの曲を聞けばその時の景色が、あの廊下が、初夏の芝生の匂いが蘇るのだ。

あの日の僕の レコードプレイヤーは
少しだけいばって こう言ったんだ
いつでも どんな時でも スイッチを入れろよ
そん時は 必ずお前 十四才にしてやるよ

人は10代で聴いた曲を一生聴き続けるという。私はこれからもハイロウズを聴き続けるだろう。どんな時でも再生ボタンを押せば、十四才の自分に出会うことができるから。

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