「ここをひばりヶ丘にしてやる!」
結婚式に行った。二次会から参加だったけど、楽しかった。
流行り病のせいでここ数年は大きな飲み会もなく、学生時代の友人と会うのは久しぶりだった。いや、学生時代のように友人と会うのは、が正確かもしれない。それぞれと飲みに行ったりはしているが、あの頃のようにわちゃわちゃと沢山の友人に囲まれるのは本当に数年ぶりだ。
どこもかしこもみんな友達。よく喋るやつも、あんまり口に出さないけど仲がいいやつも、見渡せば大体が友達。そんな同級生との日々はもう4年も前。
いつもどんな顔をして喋ってたっけ。そもそも何喋ってたっけ。いつの間にか空いたブランクが僕に不思議な緊張をさせる。
駅からのシャトルバスに乗るのがなんとなく億劫で、会場まで1人で歩いた。10/10と言えば1964年の東京オリンピックの開会式の日付。「晴れの特異日」とも言われる(諸説あり)今日は確かに見事な秋晴れだ。
昨日夜中に帰ってきた時に降っていた雨はその気配すらなくなっていて、会場までの道すがら少し汗をかいた。引っ張り出したスーツのジャケットが少し暑くて腕に抱えた。
来たことのない駅の来たことのない街の夜道を歩く。周りは皆私服どころか本当の普段着の中、長髪にスーツの男がヘッドホンをしながら歩を進めた。
会場に着くとすぐ車で来ていた友人と合流。「なんかどうやって入ればいいか分かんないね」などと言いながら中へ。扉も建物もデカい。こういう時は大体「キルアの家みたいだね」と言うが、あんまりウケない。それでも僕は言い続けようと思っているけど。
↑キルアの家の門。一番軽いやつで片方1トン、両方で計2トンあるらしい。
受付を済ませると次々に会う友人たち。懐かしい顔、そうでもない顔。先輩や後輩もいて楽しい。めちゃくちゃ年上の先輩に話しかけられた時は文字通り襟を正す。
「ガンダム好きなんだっけ」って言われて「ああ、水星の魔女見てます!?」と急にテンション上がってしまったことは反省。先輩は中一の時の僕のイメージがそれだったから話しかけてくれたらしい。凡ミス。
今更身の上を話したりとか、最近どうとかはなんとなくめんどくさくてどうでもいい話に花を咲かせる。「痩せたね」と何人にも言われて思わず頬が緩む。
よく会っている人たちはもう「痩せたね」とは言ってくれないから、こうやって定期的に久しぶりの人に会いたい。でもそのためには自分が太っていた時のことを知っていてもらわないといけないので、段々とそんな人の数も減ってきているから中々難しい。
最近はめっきり酒も飲まなくなったのでアップルジュースをひたすら飲む。友達にバレると「なにソフドリなんか飲んでんだ」と言われそうなのでテンションは高く保っておく。意外と酔っ払いたちの中にいても大丈夫だったな。酔わなくても大丈夫かもしれないね。
ビンゴ大会は盛り上がった。4つくらいリーチがあったのに結局ビンゴにならず涙を呑む。ざわざわとした中で「31⁉︎ないんだけど!」とか「66出して!」とか野次を飛ばす。段々関係なくなって数字が発表されるたびに何か叫ぶ大会になってた。
わざと口を悪くして喧嘩みたいな声を出す。いわば「プロレス」みたいな野次が会場に響く。僕も混ざって声を出す。
「うるせー!」「治安悪すぎる」「オイオイオイ」
なんとなく流れで叫んだ「ここをひばりが丘にしてやる!」が我ながら意味が分からないなと思った。
まあとにかく楽しかった。いろんな人と話して、笑った。
別にここをひばりが丘にする必要なんてないかもね。僕らが集まればそこはあのころの校舎だよ。そんなことを思いながら電車に乗ったら舞浜でディズニー帰りの人がたくさん乗ってきてなぜか落ち込んだ。
東京駅で京葉線のホームから山手線のホームまでが遠すぎて、慣れない靴が嫌になって、それでもふと「東京駅をスーツで歩く」って中々ないなと思ったりもした。
今日はまるで過去にタイムスリップしたかのようだったけど明日からは今現在の時間軸にとんぼ返り。そういうもんさ、と思いながら一抹の寂しさを感じてタバコに火をつける。
不思議なもので、明日は本当のひばりが丘に行く。じゃあ、また。