1217
12月の風が強く吹き付けてきて、慌ててフードを被って縮こまった。冬将軍の吐息を存分に取り込んだ冷気が晒された肌に刺さる。
1月は行く、というが12月も大概なものでいつの間にか新年まではもう秒読みになっている。
カウントダウンはもう始まっているようで、日ごとにその数字を一つずつ減らしている。途方に暮れる暇すらないおかげで、悲しみから目を背けていられる。
「時が解決してくれる」と言うのは容易い。長い間何も考えないようにして、記憶が少しずつ消えていくのを待っている。時計の針は常に一定であるかのようなフリをしているばかりで、「誰にでも平等」などと嘯く。
本当はきっとそんな事はなくて、もしそうだったとしたら楽しい時間があんなにも早く過ぎていく事の説明がつかない。
大体、YouTubeを観ている時の1分があんなに早いのに、サウナの中で12分計を睨んでいる時の1分はまるで永遠だ。
それはきっと僕にとっての1年があなたにとっての1年と違うように、振り返れば同じ年月であったとしても、瞬間風速の違いで如何様にも変わる。
長いようで短いようで、辛いようで楽しいようで、悲しいようで嬉しいような日々が、ただ淡々と続いていく事への焦りとそれに甘えていたい気持ちとがないまぜになったまま、寒空の下を歩く。吐く息が白くなって、タバコの煙と混じって溶ける。
遠く霞んでしまって聞こえなくなった笑い声を未だに恋しく思っている。
楽しかったんだ。あの4年、もとい5年間が。そしてそれがこの先戻ってくる事がないという事を理解してしまったからこそ余計に振り返ってしまう。
僕らが盃を交わしたあの店も、バカ話をしたあの場所も、消えていってはまた新しくなって誰かの思い出を紡ぐ。
冬の寒さにやられてしまって、懐かしさにかまけている。
前を向け。そう言い聞かせてはまた強い風に押し戻されて凍えている。