思い出したいことばかりではない…こともない。
友人の結婚式へ。前日から続いた雨模様も午後にはまるで何もなかったように晴れ間が広がる。9月に入っても東京はまだ夏の暑さが残っていて、30℃をゆうに上回る気温がシャツを汗で濡らす。
友人とは同じ大学で、お相手も同じ大学の一個上の先輩なので1日を通して大きな同窓会のような雰囲気だった。そもそも「お相手も」とか言ってるがその人とだってなんなら先月に会ってるし。
つまるところそれくらいの「仲間内」のパーティーだった。
良くも悪くも年を重ねたおかげで、「目立ってやろう」みたいな気持ちは全然なく(いや、人の結婚式でそんな気持ちがあったらかなりヤバい)、むしろ「どうか何も起こりませんように」としか思っていなかった。
変なところで着信音を鳴らしたりとか、酔って大声になったりとか、そういうことがないように気をつけようと思っていた。
「俺も昔は〜」みたいな語り方は好きじゃないのだが、多分これが10年前だったら他の人のこととかあんま考えずにテキトーに過ごしてたんだろうな〜とか思うと恥ずかしい。
もう大人なので出てきた料理もちゃんと外側のカトラリーから使って食べるよ。騒がないし、ちゃんと拍手とかもするし、肘をついたりしないよ。
しかし、なんというかこうして大きな会場でみんなで食事をしているとやっぱり大学時代のことを思い出す。大学の食堂でみんなで飯を食っていたあの時間のことがどうしたって頭をよぎる。
楽しかったなあと思い返しては「いやいや、ホントは楽しいことばかりじゃなかったでしょ」と別の記憶が邪魔をしてきたり。
隣のテーブルに見える顔はあの頃と同じようだ。ただ、少し大人になっていて、カラフルなドレス姿が「大人!」って感じだったり、いよいよスーツ姿が様になっていたり、なんなら赤ん坊を抱えていたり。
僕が年をとるように、そりゃみんなも年をとるよな〜と思った。
こういう時に思い出す学生時代は決まって春の晴れた日だ。まだ少しだけ冬の澄んだ空気の匂いが残っていて、でももう日は長くこれからやってくる夏を待ち侘びている。
木々は青く、食堂に入ってくる日差しが眩しい。
「あの頃は良かったな〜」なんて言いたくないし、言うつもりもないけれど、素晴らしい日々だったと今は胸を張って言える。
思い出したいことばかりではないのかもしれないけど、それも含めて色んなことを思い出すことができた1日だった。
きっといつかこの毎日も、どこかで振り返って「良かったな〜」と思えるのだろうと信じて、夢のような日々から醒めて現実に帰っていく。