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#64 間に合いますように
御殿場行きの最終バスが出てから2時間後の午後7時30分過ぎ、二人の欧米系のご婦人が下山してきた。二人ともとても元気た。日本語も少し話せる。「タクシーは呼べますか」と聞かれたので、「電話してみないと判りません。電話しましょうか」いうと、友人二人がまだ下山中であと2時間ほどはかかりそう」という。「では、もう少し後に電話しましょう」と答えたが平日の夜、御殿場のタクシーが五合目まで来てくれるかは不安であったが、最悪の場合・・・・と腹を決めた。遅れている友人は日本人の友人だということもわかった。「あと30分くらいで着きそうです。」と連絡が入った。時計を見ると8時半。リミットだと思い、タクシー会社に電話する。30分と聞いたが、1時間後の9時半指定の予約をする。勤務は9時までだが、「勤務時間は9時までですので、照明を消してかえります。」とは絶対に言えない。
9時を過ぎると冷え込みが厳しくなってきた。欧米系の二人は寒くないのだろうか? 今日はお湯とインスタントコーヒーを多めに持ってきたので淹れて差し出す。うれしそうな笑顔をいただく。9時20分頃予約したタクシーが到着した。二人はまだ下山してこない。運転手に事情を話すと「大丈夫!」快諾してくれた。遅れている二人を待つ間に、話は来日中のハリウッドの俳優「ブラッド・ピット」の話題になった。するとタクシーの運転手が「日本語吹き替えの声優は僕のポン友」という。「あれ・まあ」 我が家も声優さん家族とは30年来のお付き合いである。どこでどう繋がっているかは判らないものだ。
予約の時間を過ぎた頃から、御殿場駅発の最終電車の時間が気になりだした。御殿場駅までは30分必要だ。最終列車に間に合わないと小田急線松田駅まで行くか、御殿場泊りとなる。タクシー運転手と間に合わない場合の対応について話し始めた時、遅れていた二人がようやく到着した。労をねぎらうよりもすぐに出発しなければ間に合わない。慌ただしくリュックをトランクへ。あとは運転手に託して「間に合いますように!」と見送った。フィナーレはあっけなく終わった。
発電機の照明を落として、鳥居周辺に静寂と暗黒の世界が戻ったのは,午後10時を過ぎていた。