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#36ぬるくない?

 7月10日の夏山登山開始から数日後、ごく親しい人からラインが入った。「ちょっとぬるい話だけど、転ばぬ先の杖か?」という文面と新聞記事が添付されていた。
「友人と二人で下山中に靴擦れができ、庇って歩いて他のところも痛くなり歩けないと女性から警察に救助要請があった。日没が近いため警察が遭難事案として山岳遭難救助隊が救助に向かい無事保護した。女性は足に軽いケガをしていた。」というものだ。

 立秋(8月7日~22日)に入った8月中旬、御殿場口新五合目は晴れ・曇り・小雨・強雨が繰返す不順な天候だった。夕闇がせまる頃、観光客も引き潮のごとくいなくなり、御殿場登山道入り口付近もようやく落ち着きを取り戻したと思ったら、赤色灯を点滅させて消防の車がやってきて売店の前に止まった。売店は午後4時に閉店し、その前のバス停も最終便が午後5時40分だから誰もいない。車の中には消防士3名と登山姿の女性とその子供が乗っている。年配の消防士の話によると、女性と子供と一緒に登山をした男性が足を痛めて、歩くことが困難のため救助要請をしたらしい。男性は両足の爪がはがれているとのことだ。その時男性から女性に電話が入った。年配の消防士が電話にでて男性に現在位置を確認したところ、既に次郎坊を通過したとのことであった。次郎坊から登山道入り口までは約2Km。年配の消防士は、男性の自力下山の可能性を探り懸命の激励をしている。時間はかかってはいるが確実に下山しているようだ。午後8時頃男性は自力で鳥居前に姿を現した。両手で金剛杖を握り、足を引きづりながら無事到着した。消防署員は無事の到着を称えながら関係先への連絡を忘れないように指示して帰っていった。3人はベンチに座りタクシーの到着を待っているようだ。一件落着である。新聞によると今年は救助要請が例年の2倍近くあるらしい。
 
われわれ勤務員3名も、ホッと胸をなでおろしつつ、業務終了の支度をしているとベンチのほうから救助要請した男性が歩いてきてわれわれの前を通過した。トイレに行ったようだ。手には金剛杖もなく足を引きづることもなく、ごく普通に歩いて行った。
 
アレレレレ・・・・・。転ばぬ先の救助要請?
ちょっとちょっと ぬるくない!?

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