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7.想いを重ねながら
初めてのデートは他愛のない、どこにでもあるショッピングモールに決めた。お互い、男女を出さずに済む。
言うなれば「いつも行き慣れた場所」だ。
とは言え、会社での「役割」を脱ぎ捨てて、実際に週末に会うとなると、また話しは別だ。緊張する。
メッセージや電話で、相当にお互いのことはわかってきたつもりだが、実際に会って、食事をするのは仕事以上に緊張する。
平日に部下とランチするのは何でもないのに、、
彼女の服装はとても可愛らしかった。着飾ることもなく、シンプルで、活動的で、季節感があって。
こういうのをプチプラって言うんですよ。
褒めた言葉にも、遠慮がちではあるが嬉しそうな顔がみてとれた。
毎日電話で話しているのに、会話は途切れない。
なんて楽しいんだろう。。。
食事を終え、スタバでコーヒーを買って、子どもたちも遊べるような屋外のスペースにベンチに座る。
そこに並んで、さらにおしゃべりする。
楽しい時間は飛んでいく。
もう帰らないと。。夕飯の買い物とか。。
そうだね。
時をこんなにも早く感じたのは、久しぶりだ。
電車に乗り、最寄駅に止まる直前、また逢いたい、と言われた。
ドアが開くその瞬間に、俺もだよ、と返した。
少しだけ寂しそうな表情で、彼女はホームを歩き、電車は遠ざかっていく。
そうやって、最初のデートが終わり、またその夜に次のデートの約束をした。いま振り返れば、その時にはもう、男女、になっていたと思う。
こんなにも、充実した1日を過ごしたのは、本当に久しぶりだった。
もちろん仕事も続き、毎日の電話も、デートも続く。
一番寒い時季に京都へ行った。
彼女の上の子が受験を控え、北野天満宮にお参りし、合格祈願のお守りを買うことになった。
いつもの阪急とは違い、JRの新快速に乗って京都へ向かう。
修学旅行以来の、京都の市バスにも乗る。
遠足気分
梅は満開だった。
とてもかすかだが、上品な香りがしていた。
歳を取ると、梅を愛でることが得意になる。鮮やかな色、淡い色、ほのかな香り、寒さの中に凛と咲く姿。ここでもやっぱり、花に見惚れる。
そして、もう一つの目的があった。
珍しく彼女の「おねだり」。
二人が、いつも身に付けられる何かがほしい。
いつもの三宮や梅田とは違って、遠出した京都で、記念の何かを購入することを約束していた。
そして、リングを買った
シルバーの安物
しかし、こんな小さなものでも、
お互いがつながっていることを自覚できる。
こうやって、気持ちや、時間や、
関係性が、急速に進んでいった。
俺は、まだ生きているんだなぁ、、
しかし、幸せな時季も、そう長くは続かない。
二人を襲ったのは現実
分かってはいたことだが、やっぱりそうなってしまった。