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「嫁に行き遅れるよ」と呼ばないで
それは麗らかな暖かさを感じる、3月の半ばだった。
インスタなんて、所詮ただの自己満足。ここはXと違って、リア充の上澄みが四角く切り取られている。どうせ私が投稿したって、誰も見やしないさ。
すでに3月3日は、とうに過ぎていた。けれど私は、怯むことなく雛人形と娘の写真を撮影し、意気揚々とInstagram(鍵つき)へ投稿する。
そう思った矢先に、リア友から一通のメッセージが届く。
「雛人形、まだ片付けてないの?もう3月3日過ぎているよ?娘ちゃん、嫁に行き遅れるよ!」
友人からの呪いだった。まさか二階から目薬どころか、一階から火の玉ストレートが届くなんて。
「大丈夫。人形を購入したお店によると、愛知では3月いっぱいまで飾ってもいいみたいだよ」
購入したお店の人からそう言われたので、間違ってはいないはず。けれど、正直私も自信がなかった。「3月3日になる前に、雛人形を片付けないと嫁に行き遅れる」という迷信は、昔から有名なのは知っていたし。
友人とのやり取りは丸く収まったものの、言葉のパンチは侮れない。「嫁に行き遅れるよ」の破壊力がしばらく続き、眩暈がする。
思い起こせば、私は婚活難民だった。私が雛人形を片付けないせいで、娘に迷惑をかけてしまうのか。
そもそも私の実家に、雛人形はなかった。だから結婚が遅くなったというのは、言い訳だと百も承知だ。けれど「雛人形が家にない=愛されていないのでは」という葛藤が、私の中で常にあった。
「私への呪いは、ここで終わらせるのだ」
そう思って、25万で購入した雛人形。華やかで美しいが、一つ欠点がある。豪華絢爛すぎて、用意に時間がかかるのだ。
「いつ飾る?」
「今度の土曜日にする?」
「雨降ったから、今度にしようか」
最初の1年は、1月の早いうちに飾ったのに。2年、3年と続くにつれ、飾る時期が少しずつずれていく。せめて、一夜限り(3月3日の直前に飾るのはNG)だけは避けたい。
あの日から、私の中にひとつのルールが生まれた。「3月3日過ぎ」に雛人形と娘の写真を撮影し、SNSに投稿しないことだ。
尻尾を握られないために、どうすればいいのか。でもそんなことを考えて、SNSは本当に楽しいのか。凍てつく手が柔らかくなる頃に、あの出来事をふと思い出す。
(940文字)
【完】
プロフィール:みくまゆたん
フリーライター。マイナビウーマン・うれぴあ・女子SPA!・arwebなどでコラムを執筆中。
(45文字)
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こちらの作品は、三條 凛花さん(作家)の企画に参加しています。
応募条件
テーマ:3月×暮らしに関するエッセイ
「家のこと」や「暮らしの中の気づき」を自由に書いてみてください。
文字数:600文字以上、1000文字以下
形式:エッセイ
記事末尾に必要情報を追加する
文字数:(987文字)などのように記載してください。
記事のリンク:末尾に記載してください。
※リンクがないと気づかない可能性があるためです。
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こちらの企画、なんと「応募締め切り:2025年1月20日(月) 23:59」なのでギリギリです(笑)
なんと凛花さんは、無料で月刊誌を制作しているそうです。その月刊誌は、企画・執筆・編集・イラスト・デザインすべて一人でやっているのだとか。
行動力の半端ない凛花さんですが、実は大手出版社で数々の出版歴をもつ作家さんです。
書店に並んだ書籍は、代表作『時間が貯まる 魔法の家事ノート』(扶桑社/9刷)をはじめ、国内外で合計6冊。
凛花さんのポートフォリオやnoteを読んで思うのは、行動力の高さ。自分から「やってみよう」というパワーを感じるだけでなく、パッと見て「書籍をイメージできる文章・写真(綺麗)」なので、その点も素晴らしいなぁと感じます。
noteから書籍に繋げたいと考えている方は、ぜひ一度凛花さんのnoteをチェックしてみてください。そこから、いろんなヒントを感じられるはずです。
凛花さんが企画に参加したのは、なんと私の「自分語りは楽しぞ」がはじめてだったそうです。
(みくさんの企画に参加したのがはじめてで、今もアルロンさんの企画に参加中です♡)
そんな凛花さんが勇気を出して立てた企画なので、「参加するに決まっているだろぉぉぉ!」ということで、参加させていただきました。こちらの企画を知ったのは、高塚しいもさんの記事でした。
彼との生活の始まりを、「緑の彼とたっぷりのきのこ」という表現とともに、絶妙な形で表現しているのが、実に見事でした。ふたりの生活が、これからどう始まっていくのでしょうか。続きが気になる感じがいいですね。
実は私、食べ物と誰かを例えたことがないので、今後試してみたいなぁと思っています。
凛花さん、引き続きよろしくお願いします。
【婚活の他記事はこちら】