見出し画像

23年前のM1(第1回目)を見て思うこと

 先日、たおたおさんの記事「M1がつまらなくなった」を読んでみて、ふと昔のM1がどんなものか気になった。

 今はAmazonプライムで昔のM1を視聴できるので、この機会に視聴してみることに。

↑アマプラなら、歴代のM1を楽しめます。

 私が視聴したのは第1回目〜3回目と、アンタッチャブル、サンドウィッチマン、霜降り明星が優勝した時のもの。

 まず最初に見たのが、1回目。優勝は中川家だった。今やベテランの貫禄が漂う中川家も、当時はガッチガチ。

 1回目を見て思ったのが、審査員の点数の付け方がめちゃくちゃ厳しいというところ。あとは、芸人が漫才を披露している時の、審査員の顔が怖い

 審査員によっては、ずっと無表情でじーっと見ているような人もいたりして。審査員の中でも、比較的ダウンタウンの松本さんが表情は穏やかではあるものの、点数の付け方が1番エグかったことにも衝撃を受ける。表情が普段通り飄々としているだけに、そのギャップが怖かった。本当は、お笑いに厳しい人なんだろうなぁ。

 私がもしここで「漫才をやれ」と言われたら、絶対に泣く自信がある。その中で、今をときめく芸人さんたちが、ガッチガチに緊張した状態(なかには半泣きに見えた人もいた)で、芸を披露していく。

 審査員によっては、トドメの一言みたいなコメントを残す人も少なくない。具体的な内容は控えるが、審査員のコメントの中で「笑えないでしょうね。誰も」といったニュアンスのものがあり、あまりの厳しさに言葉が出なかった。

 芸人が「君たちの笑いじゃ、誰も笑えないよ」と言われたら、もはや致命傷である。それを、M1という大舞台で審査員から言われようものなら、普通の人ならもう立ち直れないはず。

 けれど、そのコメントを言われた芸人さんは今も第一線で活躍している。今活躍しているベテラン芸人さんたちは、厳しい時代を潜り抜けて生き残ってきたのだろう。

 審査員からすれば、芸人たちへの期待や想いを込めて伝えているのかもしれないけど。コメントの辛辣ぶりが、もはやトマホーク。今テレビで放送したら、SNSあたりで苦情が来そうだなぁと思ったり……。でも、それが当たり前の時代だったのだろう。

 審査員さんたちの険しい表情、厳しいコメントの中で懸命に芸を披露する彼らの姿を見て、見ている側も思わず肩をポンと優しく叩いてあげたくなる。

 古いM1を見た後で、霜降り明星が優勝した回を視聴する。私は粗品さんの密かなファンだが、新人サラリーマンのような出立ちで、ガチガチに緊張した姿が新鮮だった。

 この回では、上沼さんが比較的厳しめの発言を残していたが、それでも第1〜2回目のM1と比較すると優しい。

 かといって、審査員は厳しければいいのかと言えばそういう訳でもなく。年々芸人さんたちの緊張が解けて、のびのびと漫才を披露しているようにも感じた。もちろん、彼らからすれば緊張しているんだと思うけれど。その「緊張」の種類が違う気がした。

 M1の第1〜2回目あたりの芸人さんは、まるで刑務所で鬼教官に「今から目の前で、芸をやれぇぇぇ!面白くなかったら、絶対に笑わないからな」と命令されているかのように、緊張感が半端なかった。その緊迫感に負けずに、芸人たちがネタを懸命に尖らせていく。

 今年のM1も、もちろん面白かった。けれど、昔のM1とは別物という感じがした。

 というより、昔と比べると「芸」に求められるものも変わってきている気がする。昔は勢い、スピード、華、棘。いかに面白いか否か。

 霜降り明星が優勝した時には、審査員さんの中に芸人の「上品さ」を讃えている人もいた。笑いに上品さって重要なんだと、目から鱗だった。その他にも、上沼さんが「自虐ネタで笑いを取るな」と叱責するシーンも。

 いずれもM1〜2回目の空気からは、到底想像もつかないコメントだったので、私はそこで目を丸くする。

 今年の優勝は、令和ロマンで二連覇。もちろん、めちゃくちゃ面白かった。素晴らしいなと思ったのは、誰も傷つけず、老若男女誰でも笑えるネタで、しっかり笑えるというところ。令和の時代に受けるものを、きちんと作り込んできたところは流石だなぁと思った。

↑令和ロマン公式では、最終決戦ネタの完全版が紹介されています。

 笑いは「尖り」から、誰も取りこぼさない笑いへ。笑いに限らず、これはすべてに言えるのかもしれないが、世に受けるものを作るには「世の中」を知ることが大事なのかもしれない。

 今の人は何で笑い、怒っているのか。今の受けを狙うなら、今の人が怒るものは作らない。ある意味、エンターテイメントの世界もマーケティングが必要な時代となってしまった。

 それははたして、本当にいい時代なのか。どんな時代がきても、最高に面白いエンタメと出会いたいけれど、それが許されない時代が訪れるかもしれない。いろんなエンタメと今出会えるうちに、たくさん笑っておきたい。

 少なくとも私は粗品さんのファンなので、彼の尖ったネタが見れるうちに。そして、ギャンブルによる借金が膨れ上がって弾ける前に、霜降り明星の舞台を見に行きたいと思う。

【完】

⭐︎お笑い関連の他記事

いいなと思ったら応援しよう!