幸福な身体
みなさんは、毎晩よく眠れているだろうか。中年以降、特段の悩みごとがあるわけでもないのに、寝つきが悪くなったり、眠りが浅かったりして、ぐっすり眠れない感覚を持つようになる人は多いと思う。朝起きたときには、もう疲れている、なんて話も聞く。
若い頃は、日中どんなに活動して疲れ切っても、ぐっすり眠れば、(ときには10時間以上も眠り続けて)目覚めたときには回復していたものだが、歳をとるとなぜかうまく眠れなくなり、寝ても疲れがとれない現象に悩まされる。
言い換えれば、古くなったスマホのバッテリー状態である。充電してもしても、100%にならないし、すぐに電池切れを起こしてしまう。スマホのバッテリーと違うのは、新しいものに変えられないところで、人生100年時代と言われる今、ひとつのバッテリー(身体)を使い続けていかなければいけない。
そうとなれば、気負わずに、腹も立てず、大切に使うしかない、と思う。充電器に繋ぎっぱなしも良くないので大体決まった時間に起きて活動して、電池が完全に空っぽになる前に充電する。若い頃と変わらず動けるときもあれば、今日はダメだー、という日もある。
つい先日、大きな手術をした父の見舞いに、病院を訪れた。ベッドの上に座る父の顔を見て、歳をとったなあと実感した。術後、あちこち痛くて、夜もよく眠れないと言う。深く眠れない、から、痛くて寝付けない身体になってしまったのかー、と思う。
手術の傷に障らないように気をつけながら背中や脚を揉んであげると、筋肉が強張って固かった。長年使い続けてきた身体である。娘としてはちょっと切ない。
しかし父は、娘にマッサージされて上機嫌で「俺は幸せものだー」と呟いていた。他者に労わられて幸せを感じる。身体の新しい使い方なのではないか。若い頃は元気に動けるのが当たり前で、頼りになった身体。歳をとると、あちこち痛かったりいつも疲れていたりするが、だからこそ心地よさや、幸せを感じることが出来る、身体。
いやいや、いつまでも若くて元気な肉体でいたいよ、という声も聞こえてきそうだが。ベットに心地良く寝転がって、充電する時間を大切に、のんびりやっていこう。
(M.C)