三茶徒然日記
それでは、比喩でつなげてみましょうか。
競技場のトラックを走るのだと思ってスタートを切ったら、いつの間にか競技場の外に出され、好きな方向に走ってください、と言われてしまいました。
競技場の中であれば、短距離でも中距離でも、あるいはリレーでもハードル走でもやるつもりでしたが、いきなり外に解き放たれて、走りなさい、と言われてもねぇ… ふうっと息を吐いて、空を見上げます。東京の空は狭いと言うけれど、それは高層ビルの立ち並ぶ都心の一部の話で、住宅街に入れば結構空が見えるものです。
仕方がないので、今立っているところから、語り始めてみましょう。
私たち、みこと心理臨床処のカウンセリングルームがあるのは、世田谷区三軒茶屋。飲食店をはじめ、たくさんの個性的で魅力的なお店が立ち並ぶ街の、にぎやかな通りから一本裏に入った静かな路地にあります。ワンルームの小さな部屋に、テーブルと椅子。あとは背の低い本棚だけ、のシンプルな設えです。
私は、仕事のためにカウンセリングルームに行くと、まず窓を少しだけ開けて換気し、同時にエアコンのスイッチを入れます。コートを脱いでクローゼットにしまい、ペンとノートをテーブルの上にセットして、残りの荷物は椅子と壁の隙間に滑り込ませます。
予約の時間の5分から10分前に、電気ケトルに水を入れ、お湯を沸かし始めます。クライエントの予約時間ぴったりに、お茶が入るように、自分の中の準備を整えるような感じです。喫茶店ではないので、毎回必ずお茶でおもてなしするわけではないですが、「カウンセリングに来なければならない困った人」という意識から、「大切にもてなされる人」へと意識を変えていただけたら、という思いがこもっていたりします。
クライエントが来ない日は、パソコンで仕事をします。こうしてコラムを書いたり、大学の授業の準備をしたり。年度末に向けて、成績の処理など事務仕事も増えますね。
みことの他の二人に比べれば、自宅でもひとりの時間を取ることが容易な環境で暮らしていますが、やっぱり仕事は仕事用の部屋でした方が、集中できる気がします。
集中が途切れると、頭の中でいろいろな考えが浮かんではそれに連なる別の考えへとつながっていきます。そうしてひとり連想ゲームをしていると、思いもよらない所にたどり着いているのです。そこで、何を考えていたんだっけ?と連想ゲームを遡ってくると、自分の思考の飛び具合に失笑することさえあります。でもちゃんと話を遡ってくることができるので、なにか俯瞰する意識のようなものがあるのかもしれません。
子どもの頃から、そんなところがありました。授業中、窓の外を眺めていたら、急に音読を当てられて、立ち上がったけれど教科書を開いてもいないときがありました。でも、どこの読みを当てられているかはわかっているので、立ち上がってから教科書を開いて読んだのです。私が聞いていないと思っていた先生は、ちょっぴり悔しがっていましたね。
さて、また思考が飛んでいましたね。私は、こんな風に、仕事をしたり、考え事をしたりしてマイペースにカウンセリングルームで過ごしています。もちろん、カウンセリング中のことは、クライアントとふたりだけの守秘なので、そこは秘密ですが。
他のお二方は三軒茶屋のお部屋では、どんなふうにお過ごしでしょうか?
(M.C)
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