merveille35

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待つこと

森島さんは、お店をオープンして間もない頃に娘さんとご来店された。 娘さんが私の姉の同級生ということと、フランスの地方菓子で大きな丸いクッキー、ブロワイエを東京で食べたことがあると言っていたので、もしかしてvironですか。と尋ねると、そうです!と嬉しそうにお話してくれた。 私はそのvironに勤めていたので、娘さんが食べた時の物も私が作ったものかもしれませんと話すと、3人で笑った。 森島さんの家業の酒屋さんが近くにあったのもありよくお店に来てくれていて、 口数はそんな

    • 駐車場のおじいちゃん

      路地裏のちいさな焼き菓子屋には、専用の駐車場が無くお客さんには商店街のコインパーキングを利用してもらい、駐車券をお渡ししています。 その駐車場を管理してくれているおじいちゃんがいつもたむろっている(と言って良いのかな)事務所みたいな小屋があって、そこに出入りしているおじいちゃんが私が知る内でも5人は居る。 どの方が駐車場の管理の方で、どの方が暇つぶしに来ているお友達なのかは分かりかねるが、その5人の内の1人、藤原さんというおじいちゃんがとても私のことを気にかけてくれている

      • 路地裏のちいさな焼き菓子屋

        大通りから気にかけていないと見えないような小道を進んでいくと、長屋の1番奥にくすみブルーの扉の小さなお店が見えてくる。 それが私が営むちいさな焼き菓子屋。 この夏で5年になる。 次の繁忙期が終わる頃このお店を畳もうと考え始めたのは、ホワイトデーが過ぎたとき、ふと余裕が無い自分に気づいた。 毎週のように通知が来る原材料高騰、不況も相まってお客さんの単価は減ってきていて、なんとか売り切ることばかり考えている日々に嫌気も刺してきていた。 ある日お客さんが、電話で在庫確認をし