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甲状腺乳頭癌の話16 同じ惑星の人々

切除するかどうかの決断に至るまでの背景や心の葛藤について、自分がどんなに事細かく熱く語ったとしても、そしてそれを真剣に聞いてくれたとしても、同じ癌に罹るという状況にない人たちとは、そもそも見えている風景が違うくらいの隔たりがあって、そんな風景を前提としての理解しか得られなかったとしても、仕方ないことです。
そんな彼らのことは、「他の星の人」と思うことにして、にもかかわらず私の事を心配してくれるのは有難い、と思うのです。

でも同じ癌の経験者であれば、状況、考え方は違っても、せめて見えている景色は同じだと信じたいのです。

そこで、癌患者の集いに思いを馳せます。
癌患者の集い。時々外国映画やドラマで見かけるように、椅子が円状に配置され、他の患者や経験者の話を聞いたり、自分の話も聞いてもらい拍手をもらい、共感し合ったりする。そうすれば少し前向きになれるはず。
でもこれは禁酒の会のシーンだったかもしれませんし、勧誘の人が入り込んでいるかもしれないので、そんな空想をするのは、ずいぶん前にやめたことを思い出しました。

集いはなくても、経験者の方々の話は聞いてみたいものです。

そこで、ネット検索してみることにしました。
10年前に検索した時には、「甲状腺乳頭癌」ではあまり情報がなく、マニアックな癌なのかな?と思ったのを記憶しています。
その後は、経験者の方々の投稿を読んだら悲しくなってしまいそうで、検索することをずっと避けてきたのです。
でも、自分の状況も変わり、全く逆の心境になったのでした。

10年経ち、あらためて検索すると、多くの経験者の方々の文章、写真、動画まで、たくさんの投稿が見つかりました。
年齢も性別も様々、置かれている状況や考え方、文体も様々でした。
それぞれの全てが語られているわけではないでしょうし、語られている以上の苦労があるかもしれませんし、傷の治り方も人それぞれですし、全てを鵜呑みにすることはできません。
しかし、ふとした表現、描写だったり、行間からも、それぞれの人から発せられる「声」が伝わってくるような気はしたのでした。
そして、自分の身体の一部がそんな「声」に反応するのも感じたのでした。

そんな投稿を連日、検索したり、読んだり観たりしているうちに、

「傷は次第に目立たなくなっていくはずだし、残っても隠せばいいし、それだけのことではないか。それよりも癌を切除してもらい、その後は再発しないように祈ったり、健康に注意して生活していくことを考えよう。それが今自分がやるべきことではないか」

と、そんな悩まなくても辿り着けそうで、でもやはり辿り着けなかったところに、ようやく至ったのでした。
きっと自分の背中を押してくれる何かを探していたのだと思います。

もうセカンドオピニオンがなくても大丈夫です。
頭と心の乖離がなくなっていくのを感じました。

切除手術をお願いしよう!

→ 続く

お読みいただき、ありがとうございました。

追記:見出し画像は、「みんなのフォトギャラリー」から選択し、super_acacia155さんからお借りしました。ありがとうございます!


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