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『メモの魔力』の魔力とはジョブズだったのか…

去年メモ本で一斉を風靡したのがこの本である。

たしかに、この本には魔力がある。最高にポジティブな意味でなかなかページが前に進まない。いいこといっぱい書いてあるのだ。

第一章、第二章と内容を理解しつつ、第三章の例題を自分の手を動かしながら前田さんのおっしゃることを実践してみた。

『メモの魔力』の簡単なご紹介

この本導入部分のメモの始め方からご紹介するのが、分かりやすいと思います。

こんな感じのメモ(メモプロセスと言ったほうがいいかな)になります。

ファクト⇒抽象化⇒転用

この順番でメモを取っていきます。

ファクトは、本で読んだことや外出していて気がついたこと、お風呂に入っていて気がついたことなどの一次情報を表します。

抽象化は、そのファクトはつまりどういうことなのか、汎用的に言い換えたものです。

転用は、抽象化したものを他に応用できないかと思考することです。

実際にどんな風になるのでしょうか。自分の書いたものもまた機会があればさらしたいですが、Webの記事でとても分かりやすいものがあったので、引用させていただきます。

例)幼少期に苦しかった経験は?
・ファクト
→お金がなくて塾に行けないが、塾に行っている子のほうがどうしても賢い。でもその後、死ぬ気で勉強して追い抜いた。
・抽‌象化
→運命を努力で覆したい、逆境はバネになることを証明したいというのが自分のモチベーションになっている。
・転用
→このモチベーションを原点に置いておけるような事業を創る。こういった憤りを持っている人に自分の体験を伝えて勇気を与える。
                        上記引用サイトより

「ファクト」⇒「抽象化」⇒「転用」のプロセス

このように、この本ではメモという行為を単にメモをするすだけでなく、メモを一連の情報処理のプロセスと考えています。

まずは「ファクト」で事実を可能な限り正確に、臨場感が分かる感じで書いてみます。

それを抽象的に捉え直して結局、あの事実(ファクト)はこういうことだったんだなと総括するのが「抽象化」になります。

そして、その総括をそのままにせずに、これを他に活かすとしたらどんなことができるだろうという行動の領域にまで拡大したのが「転用」のようです。

単なるメモの上手なとり方、例えば略記号を使うとか、速記するコツとか、色分けとか、そういったことを伝えたいのではないようです。

最終的に具体的な未来の行動まで一つのメモから引っ張り出してしまうのが、確かに類書にはない特徴となっています。

ここが、本書の魔力の部分で、著者自身が下記のように言っています。

本書は、単なるメモや思考術のノウハウ本ではありません。これらメモや抽象化の技法を学んだところで、結局、「自分が何をやりたいのか」ということが明確でなければ、さして意味がありません。 『メモの魔力』P116

余談ですが、これは世界的大ベストセラー(コンマリさんは村上春樹と同じくらい米国で有名らしい)のあの片付け本と、コンセプトが一緒です。

この本も、お掃除のやり方ではなくて、生き方が変わるような掃除の魔力という新しい魅力と可能性を与えてくれました。決して、台所のゴミはすかさず大きめの半透明の袋にしまってえ… とかは近藤麻理恵さんは言いません。

題名からして「人生がときめく」です。

そしてフルタイトルは『人生がときめく片づけの魔法』です。
キーワードは、両方とも「魔力」だったのですね。

たかがメモ、たかがお掃除、これが人生の問題にまでつながるという点で、両方とも単なるノウハウ本ではないようです。

スタンフォード大学でのジョブズの公演も 魔法スピーチだった

私はその他に、断片的なメモ、何気ない日常を、その人にとってかけがえのない一つのストーリーにするという点で、あのスタンフォード大学でのスティーブ・ジョブズのスピーチを思い出しました。

後からでしか、点と点はつながらないというあのスピーチです。

先月の「みこちゃん読書感想文企画」でかっちーさんも取り上げていましたね。

You can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.

何かを期待しながら点と点を結び付けられるなんて考えることなんてできないよ。つまりさ…君たちは後ろを振り返ったときにだけ、それらをつなげることができるんだ。だから言いたいのは、君たちは信じる必要があるってことなんだ。無数の点は君たちの将来の地点において、何というか、結び合わさるんだろうな、ってね。(拙訳)

ジョブズの言う点と点、これが前田さんのいう「ファクト」です。

そして、つなげる、これがこれがすなわち「抽象化」です。

将来の地点において思考する。これがメモの「転用」です。

天才とはきっと点を線につなげられる人なのだろう

そうしてみると、ジョブズの天才性が少し身近に感じたれます。イノベーションとは思いつきではなくて、過去の自分の体験(思い出したいことも思い出したくないことも)が、いずれ、線となってつながる。

多くの人は、自分の大切な体験を、ゴミを捨てるようになかったことにしたり、気が付かないで忘れていたりします。コンマリさんの『断捨離』本が流行ったのも、同じだと思うんですよね。捨てるものはなにか、残したいものはなにか、これを点検することで一つのストーリーが見えてくる。

だとすれば、人は皆天才だといえると思います

だから、天才はみんなのなかに何気なく備わっている。それを形にする(先にする)ことができれば、人はみな生き生きと創造的な人生を送れるのだと思います。

点を捨ててしまったり、振り返らないように封印したりするのではなく、それを未来につなげること。それなら、心がけ次第でできそうな気がします。

『メモの魔力』は、メモが大化けする瞬間を見事にハウツー本にしてくれました。でも、それは同時に自分が大化けするヒントにもなっているのではないかなと、みこちゃんは時々この本をジョブズを思い出しながらめくったりしています。

読書感想文

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