【遺稿シリーズ】最後のドレス
みこちゃん家の桜の切り株の中から、某文豪の未発表の遺稿が見つかったので翻訳してみました
(゜0゜)
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桜の花が舞い落ちるその時期に、いつでもここにやってくる。
心の乾いたこの私の心に桜が命を落して降りてくる。
胸のブローチの横に桜の花びらがひっかかって
下に降りれない幼児のようにまとわりつく。
振り払うこともできるけど、それができなかった。
「ナスターシャ」
大学の旧友と2年ぶりに会った。
振り向くと、白い歯をこぼして、広げた手で桜の花びらを落してくれた。
いまでは、グルーチェンコに父もお世話になっている。
落ちた花びらは、まるで我が家の没落の象徴のように思えた。
「何も心配いらないからね」
グルーチェンコはすべての父の負債を引き受けてくれた。
「結婚式の日取りに合わせて、親戚に会って欲しい」
頷いた。
そのときふと脳裏に、私が愛しているのは私の家なのか、グルーチェンコなのか、という問いかけが浮かんだ。
屈託のない笑顔で笑うグルーチェンコに、せいいっぱいの笑顔を返した。
「そのドレスは素敵だね」
没落した貴族がせめて手放さなかった最後の最後のドレスだ。
最後の最後。
手で払うこともできなかった。
それでもグルーチェンコは私の胸に降りた桜を払おうとした。
「払えないものはもうそれで」
グルーチェンコは静かに頷いた。
桜まみれの私達は、お互いの体を近づけて静かに口づけを交わした。
お互いの胸の桜が、まるで静かに落ちていった。
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嘘ですみこちゃんのオリジナルでしたー(^-^)
第十七回目は! チェーホフでしたー