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【遺稿シリーズ】

みこちゃん家の父の煙草入れから、某文豪の未発表の遺稿が見つかったので掲載しました
(゜0゜)

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冷たいリボルバー式の拳銃の重みを右手に感じながら、俺は加えたタバコを左手でつかんで灰皿に押し付けた。

冷えた重鉄を親指で弄りながら、これから殺る男のことを思った。

仕方のないことだ。
あいつは組織のヘロインを自分で捌いて蓄財を続けていた。
金に困ったのだろう。大きな金を動かしてしまった。組織は気がついた。

よりによって、兄貴をこの手で殺ることになるとはな。
重鉄の冷たさの中に、兄貴のあの笑顔が浮かんだ。

最初に対立する組にカチコミをかけた時、俺は言い付けを破った。

「ここで待っていろ」

兄貴は自動車免許も持っていない俺に運転させた車から出て行った。

拳銃の音をはじめて聞いた。
なんて美しい音なんだと思った。

その時。

兄貴の「おい待てこのやろう」という声が聞こえた。
おれは兄貴から言われたことを無視して、車から降りて、その事務所のマンションの裏口に走った。

兄貴が欄干をつかみながら駆けるように階段を降りてくる。

俺は、兄貴が獣のように仕留めたがっている男を、自分の拳銃で撃ち殺した。

褒めてくれると思った。
ところが兄貴はいきなり俺を殴った。

悲しいわけではなかったが、涙が流れた。

「こんな危険なことはまだやるな」

はいと頷いたが、涙は別の意味で止まらなかった。

「行くぞ」

車に帰った。
イグニッションキーを回して右足でアクセルを踏んだ。

通行人が避けていった。

「ありがとうな」

兄貴が助手席でそう俺を見ながら言った。
俺は相槌も打たずに運転に注力するように、前を見据えて車を走らせた。

キャメルの香りがした。
兄貴の大好きな煙草だ。
兄貴が自分で途中まで吸ったキャメルを俺の口に差し込んでくれた。

今度は暖かい涙がこぼれた。
暖かい涙に驚いた。
俺は暖かい涙を流せる人間だったんだろうか。

自分で自分に驚いた。

あいつを殺った。
兄貴を殺った。

俺は組織の犬になった。
重鉄の冷たさでしびれた右腕に、途方も無い冷たい涙が上から雫のように刺さった。

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嘘ですみこちゃんのオリジナルでしたー(^-^)
第二十回目は! 大藪春彦でしたー

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