ゾワッとする!民俗学Jホラー「祝山」レビュー
ようこそ民俗学研究室へ主任研究員の天道巳弧です。
気軽に「みこ主任」と呼んでね。
突然だが君たち心霊スポットは好きかな?
最近はネットでいろんな心霊スポットの情報が手に入るから体験談を読んで行ってみたいな~と思うこともあるよね。心霊スポットを検証するYoutubeチャンネルも増えたし結構身近な存在になったんじゃないかな。
今日はそんな心霊スポットで肝試しをして酷い目に遭うお話を紹介しよう。
動画で見たい方はこちら↓
祝山
こちらは2007年に出版された加門七海氏の祝山。
一言で言うと「上質な民俗Jホラー」。
読者を驚かせるようなびっくり系の派手さは無いがじわじわと日常を侵食する恐怖があなたを襲う。
あらすじ
ホラー作家である主人公・鹿角南(かづのみなみ)の元に旧友からのメールが届く。内容は、ある廃墟で「肝試し」をしてから奇妙なことが続いているというもの。
スランプ状態だった鹿角は「作品のネタが拾えれば」との思いで肝試しメンバーに会うが、それをきっかけに怪異に巻き込まれていく。
狂っていくメンバーと日常を侵食する恐怖にどう立ち向かうのか、という物語だ。
主人公が肝試しのメンバーではなく外部の人間というのが面白い。
その分巻き込まれていく過程でじわじわと押し寄せる、「逃げ場のない恐怖」の圧迫感が増す。
見どころ
何と言っても一番の見どころは「怪異の正体」だろう。
正体とそこにたどり着くまでの調査が非常に民俗学的だ。地図から地道に探すシーン等は読んでいてワクワクする。これは民俗ホラー好きには刺さるだろう。
肝心の怪異の正体だが、ネタバレを避ける範囲で言うと…。
読んだ瞬間あまりの悪寒に「やっちまったなぁ!!」と叫びながら
本を壁へ向かって放り投げようかと思った。
日本人なら多くの方が同じような感想を抱くと思われる。
また、怪異の正体がシンプルで分かりやすい分、それを盛り上げるための日常シーンがしっかり作られている。
肝試しメンバーが狂っていく様子や主人公の日常を侵食する怪異は、
一見すると「まあそういうこともあるだろう」で済まされる程度のものだ。しかしそれらが重なり悪化していくことで怪異による心理的な圧力を与えてくる。
ジャパニーズホラー特有のじっとりした雰囲気、とても良いよね。
感想
とても面白かった。
視点が一人称で余計な装飾のない文章だったため軽く読むことができ、キャラクターも状況も変に作りこんでいない分リアリティがあった。
現代日本が舞台のため現実と物語が地続きのように身近に感じられ、また「肝試し」というポピュラーなテーマを採用していることも本当にありそうな話としてのリアリティに拍車をかける。
構成も無駄がないため中だるみしにくい、読んでいてあまりストレスを感じなかった。
一人称視点だから、普段ネット小説を読んでいる人なら違和感なく読めるんじゃないかな。文庫本で250ページもないため「ちょっと読んでみない?」と気軽に薦められて良いね。
Jホラーらしく少し盛り上がりに欠けるかなとも思ったけど、前述の通り放り投げたくなるくらいには盛り上がったのでヨシ。
ただ主人公に霊感があり、物語がそれを前提に進む部分もあるため感情移入できない人はいるかもしれない。でも主人公自身についての描写は比較的多く取られているので、どんなキャラクターか掴みやすいよ。
というわけでいかがでしたでしょうか。
祝山のレビューでした。
面白いので是非みんな読んでみてね。
こちらを読むと軽率に心霊スポットで狼藉を働けなくなるよ。
(そもそも狼藉を働くなという話なのだけど)
他にも民俗ホラーでオススメの本があればコメントで教えてね。
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