吹奏楽におけるドラム〜楽譜通り叩かなくていいってどういうこと?
こんにちは、作編曲家/レコーディングエンジニアの三國です。
吹奏楽でよく使われる楽器のなかで、数少ない……というかほぼ存在しない「楽譜通り叩かなくてもいい楽器」のドラムセット。
先生に「楽譜通りきっちりやらなくてもいい」と言われたり、あるいは「楽譜通りちゃんと叩け!」と言われて困惑した方も多いんじゃないでしょうか。
作編曲家から見た「どういう部分は楽譜通り叩かなくてもいいのか」、あるいは「どういう部分は楽譜を守ったほうがいいのか」をまとめてみました。
そもそも、なぜ楽譜通り叩かなくていいのか?
理由としては、大きく二つで
他の楽器と違ってクラシック由来の楽器ではないので、そもそも「楽譜通り演奏する」という文化ではない(パターンやキメのリズムだけ決めて、あとはプレイヤーのセンスに委ねている)
楽譜を書いてる側も「あくまでだいたいの目安です」くらいのつもりで書いているので、正確に叩かれることを想定していない(正確に叩こうとするととても叩きにくい楽譜になっていることもあります)
という感じでしょうか。
楽譜を守らなきゃいけない部分について
例えばこんな楽譜があったとします。
基本的にドラムはベースとリンクしている楽器で、とくにキック(バスドラム)を打つタイミングはベースもその瞬間打っていることがほとんどです。
なので、キックのリズムを勝手に変えてしまうとベースとのアンサンブルが成立しなくなってしまうのでここは変えてはいけない、楽譜通りに演奏しないといけないポイントです。
うまく演奏できないなどの理由でやむを得ずキックを多少簡略化(音を間引く)はナシではないですが、シンコペーションの箇所など音楽的にアクセントが付くような箇所はなるべく間引かないように慎重におこないたいところです。
また、スネアの書かれているリズムも基本的には守ったほうがよいです。
ハイハットの指定をライドに変える、ライドの指定をハイハットに変える……はナシではないですが、大きくイメージが変わるのでこれも慎重におこなったほうがよいです。
楽譜を崩していい部分について
これがある意味ドラムという楽器の真骨頂です。
4小節や8小節など、フレーズの切れ目でおこなうフィルイン(おかずとも呼ばれます)ですが、これは楽譜通りである必要はありません。また、楽譜にとくにフィルインが書かれていない場合でも、8小節に一回とか4小節に一回フィルインを入れてみるのも大歓迎です。フィルインを入れたあとに次の小節頭にクラッシュシンバルを入れるのも大歓迎。
また、アレンジャーがドラムについて詳しくなくてハイハットで16分を刻んでるなかスネアも書かれていて手が間に合わない、足りない……というときもありますが、
こういう場合はスネアを優先して、スネアが鳴っている瞬間だけはハイハットを省略しても問題ありません。
基本的にキックとスネアさえ楽譜を守っていれば、譜面に書かれているよりハイハットを一瞬多く刻む(楽譜ずっと8分で書かれているところを一瞬だけ16分で刻む)、ちょっと一瞬ハイハットをオープンにしてみる、バッキングに合わせてとクラッシュやスプラッシュも叩いてみるなどもアリです。
音楽のジャンルによってはまた話が変わってくる場合もあるのですが、吹奏楽でおそらくもっともよく演奏するであろうタイプの音楽はだいたいこんな感じです。