見出し画像

はじめに:なんでこんなことを書くの?

はじめに:なんでこんなことを書くの?

 

本シリーズの記事はかつて私が著者となり自費出版した
(1)「光科学技術革命 ドレスト光子はやわかり」―異次元の光技術入門― 丸善プラネット、2014年3月
(2) 「ドレスト光子の深わかり」―異次元の光の科学と技術を味わう― アドスリー、2022年6月
の一部の文章と図を適宜アップデートしたものです。
 これらの自費出版のきっかけとなった新技術普及活動組織「(特定非営利活動法人)ナノフォトニクス工学推進機構」はすでに役目を終えて解散したため、これらの書籍を目にすることは難しいと思います。しかし記載記事の内容はいまだに新鮮さを保ち、将来への展望を与え続けております。このような事情から本シリーズ記事では(1),(2)の一部を再度紹介させて頂くことにしました。
 太陽から、発光ダイオードなどの人工物から、そして微生物から発した光は猛スピードで飛び、瞬時に宇宙に満ち満ちます。これらはおなじみの「普通の光」で、動植物たちに命を与え育んでいるのです。「普通の光とは何か?その応用は?」などの研究の歴史はとても長く、学校でもていねいに教えられているので、皆様よくご存じだと思います。
 ところで、このような光に加えて「小さな光の粒」があるのはご存じですか? これは40年ほど前に私が見つけたもので、私はこれを「ドレスト光子」と名付けました。「光子」は「こうし」と読むのですが、「みつこ」と呼ばれることが多いです。「光子」は「こうし」と読みます。しかし往々にして「みつこ」と読まれがちです。「みつこ」という人の名前を連想するからでしょう。このように誤解されることからも察することができますが、ドレスト光子はほとんど知られていないのです。その理由の一つはその性質が普通の光とは大きく異なること、従って学校で習った知識を使っても理解するのが難しいからです。ということで、ほとんどの人は「難しい」と感じて投げ出してしまい、その結果「知られていない」ことになっているのです。
 一方最近では、普通の光を応用した技術の進歩は限界に達しつつあります。また、欧米で展開している新技術開発にくらべ、これらの後追いをしている日本の技術開発はあまり元気がなく、国際的競争力が低いようです。この状況は上記(1),(2)の書籍を出版する以前、すなわち20年も前から続いています。これに対しドレスト光子を応用した技術は世界をリードする独創的な研究成果であることから、進歩の限界に達しつつある既存の光技術に取って代わり、多くの分野に使える基盤的な包括技術となりつつあります。このような最近の状況を考えると、ドレスト光子について説明することはグッドタイミングでしょう。
 まず第1、2章はその準備のための状況説明です。いわば世間話ですので、気楽に読んでいただけると幸いです。次に第3章はいよいよ専門的な説明になります。「難しい」と感じるでしょう。しかし新しい科学を正確に伝えるためにはこの段階でで専門的な説明をせざるを得ませんでした。ここに新しい科学のエッセンスが詰まっているのです。それは普通の光に関する言葉を使ったのでは不可能です。つまり皆様が学校で習った事のない言葉の羅列になっています。しかしたとえ話などに頼った中途半端な説明はかえって誤解を招くのみです。ということで科学の普及と正確な説明を両立することは難しいのですが、あえて第3章では後者の説明方法を取りました。応用に興味のある方々、すなわち「何の役に立つのか?」に興味のある方は第3章は読み飛ばし、第4章以降に進んでください。
 第4章以降ではドレスト光子とナノ寸法物質(ナノ粒子)とを組み合わせて新しいデバイス、加工装置、エネルギー変換、システムを実現し、技術の質的変革をもたらして社会を支える包括技術を開発したストーリーを紹介します。
 これらの記事に加え、著者の苦労話、独白を「こぼれ話」としてご披露します。革新技術が生まれ育った様子を味わって頂ければ幸いです。
 さて、本稿を終わるにあたり、私は決して「何かの役に立てよう」と思ってドレスト光子の研究を始めたのではないことを申し上げたいと思います。そうではなく「光とは何か?光はどこから出てくるのか?」を深く考え、知りたいと思って始めたのです。このような研究を長きにわたって続けた結果、ドレスト光子という新しい概念を生むことができました。
 科学はわかっていないことの方が圧倒的に多く、また、正しいを思われた答えでも、説明できない事象が発見されて、新しい展開が始まります。後に人類にとって有益だと判明する真に重大な発見のほとんどは、有用性を追う人々ではなく、単に自らの好奇心を満たそうとした人々によってなされたそうです。私のドレスト光子研究はこのような類のものです。つまりドレスト光子が何かの技術を発展させるために有用だからという理由によるのではなく、小さな光を見つけてみたい、という好奇心に基づいたのです。
 これらの一連の知見は科学に対する皆様の好奇心を満たして差し上げられるかもしれません。そしていつの日か皆様の明るい未来の活力に「役に立つ」(?)のであればとてもうれしいです。

いいなと思ったら応援しよう!