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仕事の依頼が来るコツは、自身が「どんな仕事を求めているか」を整理し、勇気をもって明示すること
「どうしたら、仕事の問い合わせが来るんでしょうか?」
そう相談されることがよくある。わたしは個人のSNSの使い方についての相談員を生業にして久しい。その問いを口にする人の範囲は広く、フリーランサー1年生からグローバル企業の複業ワーカーまで、質問される機会の多いベスト3に入り続けている。
その際、わたしがチェックするポイントがいくつかある。
1.どんな仕事が受けられるか明確か
2.新規案件を受けられるキャパがあるか
3.仕事を求めていることを表明できているか
結論として、相談者が、この3つを充たせているケースはほとんどない。
そしてこれらを、ひとつひとつ指差し確認することで事態が改善する余地があることが、経験的に分かった。やることはどれも、自分にしか見えてない情報を、可視化するアプローチにすぎない。
このnoteでは、こうした点をふまえ、フリーランサーが新規の仕事を受け付ける時のコツを書いていきたい。
すでに売れっ子の方や、先々までポジションが不動で明確だ、という人には役に立たない情報かと思うし、従事する業種によっては該当しないこともあるとは思うが、読者や、その周囲の方へ参考になる点が1つでもあったらいいと思う。
1.どんな仕事が受けられるか明確か
これは、さほど問題にはならない。何でもいいからなんとなく仕事が欲しい、という人はあんまりいない。スキルアップの最中にいる場合は仕事を求める余裕はないし、ある程度のスキルが身についた人が求める範囲はおのずと具体的になるからだ。
稀に、新たなチャレンジをなんとなくしたい、という人がいるが、そのケースにおいては問いを重ねて「仕事」のパッケージをなるべく誰にでもわかる形で伝わるように整理することになる。キャリアコンサルやプロコーチのうち、自身の業界に多少なりとも明るい方を見つけ、壁打ちしてもらうのがよいと考える。
いずれにせよ、他者に説明できるよう、自身の担当可能な仕事について明快に説明できるようにするのが一歩目となる。
2.新規案件を受けられるキャパがあるか
次に大切なこと。フリーランサーや複業をする人は、常に不安がつきまとうもの。よっぽど売り上げを会社員時代の何倍も毎月得ている人でさえ、半年先、一年先がクリアになっていることはほとんどない。
だからいったん、時には盲目的に仕事を求めてしまう。だが、自身の稼働時間や、精神的なキャパシティから、受けられる仕事のボリュームを正確に把握できている人は、ほとんどいない。
「あと、平均的な受注単価の案件が、あと何件あればいいのか」くらいの具体的な問いを置いて整理してみる。あと2件あれば、ということになれば、大々的なSNSブランディングを根っこからやる、などの大掛かりな選択肢はいったん置いておき、最近連絡のとれていなかった、身近な関係者に連絡してみるか、ということになったりする。
3.仕事を求めていることを表明できているか
もっとも大切なのはこれだ。あなたは、仕事が募集中であることを明示できているだろうか。
仕事がまだまだ足りてない、と感じているライター、編集、エンジニア、デザイナー、イラストレーター、コンサルタント、コーチ、事務、などなどの、さまざまな方のほとんどができていないことだ。
いや、きちんと仕事の依頼のルートはSNSに明示しているよ、と思われる方もいるかもしれない。
だが、それでは不十分なのだ。
SNSでは、みんなうまく行っているように見える。SNSはいいねを元にドライブがかかる仕組みのせいで、自分が足りてない、至らない点を書く動機がすくないからだ。
すると、観測した対象が誰も、職務を全うして仕事が入り続けているような気がしてくる。仕方のないことでもある。しかも、よかれと思って、自分がしている仕事について発信すればするほど、その傾向は加速するのだ。
だから、自分がいま、新たな仕事をできる余地があることは、わざわざ示す必要があるのだ。
むこう数ヶ月でどういう種類の仕事をどれくらい受けられるか
ただ、新たな仕事を求めている人で「自分が新たな仕事を求めている状態にあること」を明示的に示せている人はそこまでいない。
では、どうすべきか。やることは簡単で「むこう数ヶ月で、どういう種類の仕事を、どれくらい受けられるか」ということを明示すればよい。
ところで、この世に、空車状況が明示的でない駐車場は、ほとんどない。
パーキングという、あんなにニーズが明確なサービスでさえ、そうだというのに、ただでさえ何をしているかわからない、しかも忙しそうに見えてしまう、われわれのようなフリーランス諸氏が、いま仕事を受けられるかどうかを明示してないのは致命的だ。
ただ、これには問題がある。「むこう半年間、いっさい予定されてる仕事はない、なんでもいいから仕事をしたい」とは書けない。誰が見ても明らかなネガティブキャンペーンになってしまう。
じゃあどうするか。
書く時には具体的な意思を示す必要があるのだとわたしは考える。どういうタイプの仕事を、どれくらいする意思があるかを示す必要がある。
つまり「いかに自分のキャパが空いているか」をそのまま伝えるのではなく、「どのように働くイメージができているか」を書くことが肝要なのだ。
<A仕事>には経験を積んでいて土地勘があるし、チャレンジになるかもしれないが<B仕事>に取り組む準備は研究と学習を重ねてできている。関連するであろう<C仕事>には協力者と連携して請け負うことができる。いずれもむこう3ヶ月は数件ずつ受けられるキャパがある。
働く具体的なイメージと、かねてから用意されているであろう「実績集」があれば、仕事を受け止めるためのツールとしては、これでひと揃いとなる。
とはいえ、こういうことを発信するには勇気がいるものだ。
そこで、こういう類のテキストは、なるべく具体的に明示し、できれば近しい境遇にある仲間と互いに見せあってフィードバックをしあえたらベストだ。以前にXでシェアした具体例も示しておく。
これ!お仕事を受付け中のクリエイターさんは、この感じで、お仕事を受けられるキャパを開示するといいとおもうんですよ〜〜〜〜お手本だな〜〜〜 pic.twitter.com/STAI34wdDU
— みずのけいすけ|goodbuff Inc. (@mikkemac) April 11, 2024
「あのfacebookの投稿見ましたよ!でも、上から目線でしたよね(笑)」
ところで、こんなことがあった。
ある日、わたしを相談パートナーに選んでくれて2年目になるHさんが、こう言った。
「みずのさん、どうしたら、仕事の問い合わせが来るんでしょうか?」
そこで、このnoteに書かれた3か条を示して、わたしは60分の相談時間を目一杯使って整理し、アクションを提示した。Hさんは律儀にそれを実践し、自身のアクティブなSNSであるfacebookに投稿した。
効果はてきめんで、またたく間にたくさんのいいねがついた。
その次の面談の時間でHさんと話をした。
「おかげで、周囲からは好反応でした。でも、問い合わせは0件でした」
該当するfacebookのpostにも、Hさんのふだん投稿と異なり、コメントが1件もついていなかった。
続けて、Hさんがこんなことを言った。
「続けていかないとわからないですよね。ところで、こないだ、後輩とランチしたときにこんなことを言われたんです。『あのfacebookの投稿見ましたよ!でも、上から目線でしたよね(笑)』って(笑)」
参りましたよ、という雰囲気で、その言葉を話すHさんの表情が、いい感じにやわらいでいたのを見て、ピンときたわたしは、その後輩とのやり取りを、次はfacebookに書いてしまうのはどうですか、と伝えた。
Hさんは、驚きつつも、なるほど、と頷き、すぐにその後輩とのやり取りについて書き、先日の「こんな仕事受けられますpost」を改めてやわらかく説明し、いきなり見積もりを出したりしませんので、ランチでもいきましょう、という旨のメッセージをpostした。
すると効果はてきめんで、今度は、前回のpostを超えるいいねがついただけではなく、たくさんのコメントが溢れた。
実際に仕事の相談も何件かきたらしい。
幸いにもめでたい結果となったが、このケースは、Hさんがふだんから徳を積んだ結果でもあり、そのままどなたもトレースできるようなケースではないかもしれない。
だが、人は、情報をただ指し示すだけでは、その人の姿勢・表情までは伝わらないことがよくあることを、この一件から私は学ぶこととなった。
🕊 🕊
長くなったが、フリーランスが仕事を求める際のチェックポイントとして、以下の3点を明示できるとよい、という話でした。
①どんな仕事が受けられるか明確か
②新規案件を受けられるキャパがあるか
③仕事を求めていることを表明できているか
この視点も加えたらどうか、という点があったらぜひSNSなどで教えて下さい。
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