東京駅とともに生きてきた
千葉県北西部に住んでいるため、新宿や渋谷といった街はなかなかに遠く、買い物をするとしたら日本橋エリアが便利だ。室町のエリアは歩くだけで楽しい。そして、最近は出張が増えたので、東京駅をよく利用する。
僕は東京駅が好きだ。
いまから遡ること23年前、高3の冬。大学受験のため、名古屋からの高速バスで明け方5時、東京駅八重洲口に降り立ったときの景色をよく覚えている。
くるりの「グッドモーニング」を聴くたびに、この景色を思い出す。この曲ではバスが新宿に着くが、20歳になる前の僕にとって東京との接続点といえば、ひと気のない早朝の、東京駅八重洲口にほかならない。
そこからずっと、東京駅は帰省や出張、旅行のたびにずっとずっとお世話になっている。そして、駅じたいは、首都圏にある他のターミナルと同様、進化をどんどこ続けている。
とくに、東京駅の駅ナカ、グランスタであれこれ見て回るのが好きだ。新しくできたオーベルジーヌに目を引かれながら、やはり地雷也の天むすを買ってしまう。
寄り抜かれた名店どうしで鎬を削っている空間に、絶え間なく客が流れ込んでいくさまはいつ見ても迫力がある。そして今日も、人にぶつからないようにスーツケースを転がしながら、伊達の牛タンおつまみカットを買うのだ。
ある時のしいたけ占いで、占い師のしいたけ.さんが「気分を入れ替えたい時に、大きな駅を訪ねる」ということが書いてあった。あらゆる方面の行き先表示を眺め、気持ちを新たにするらしいのだ。
その感覚はよくわかる。1時間後の有楽町でのアポイントをサボって、博多にも仙台にも行こうと思えば行ける。軽井沢でゆったりしても、熱海でのんびりしてもいいのだ。どこにだって一本で行ける。どの旅程も、魅力的だ。
おそらく、自分はどこにだって「行こうと思えば行ける」ということを、ターミナルの真ん中で、ふわりと確認することが大切なのだと思う。そして、あらためて山手線にのり、打合せへ向かうのだ。そんな時が僕にもあった。
リモートワーカーとなり久しいため、ジャケットを着てあちこちの会社を訪ね歩いていた頃からは、ずいぶんと時間が経っているけど、あの、慌ただしい時間の中で、東京駅の構内で、ふっ、とひと呼吸を入れていたときのことは今でも思い出せる。