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「作品のない展示室」オープン直前、ぶつかる、でも大丈夫な気がする。【美術館再開日記7】
開幕ギリギリまで準備した「特集 建築と自然とパフォーマンス」。「作品のない展示室」の最後のアーカイヴ展示だ。てんやわんやの準備のなか、展示だけではダメだと思い始めた。今、こんな状況だからこそ生身のアーティストと何かをやろう。やる。
という決意と対話の再開第5週は、しかしコロナ感染者の再急増という事態にぶつかる。ぶつかりといえば、「作品のない展示室」全体の、最終の姿が生まれるまでの議論もあった(詳細は割愛)。こういう議論は世代交代の一歩だなーとも感じていた。
どっちも未知。でも大丈夫な気がした。展示室の窓から見えてくる、あの風景のおかげだった。誇張ではない。
休館日、6/29。アーティストたちといっしょに、何かをそーっとさわろうとしている。
「作品のない展示室」の最終パート、
「特集 建築と自然とパフォーマンス」の
出品資料リストを自宅で黙々と仕上げる。
4週間、よその展覧会にはほとんど行けていない。
が、もともとわりと出不精である。
展覧会でも旅でも、
一度にたくさん回るのは苦手で、
少ない行き先でじわっと考えたい。
体力もない。効率は悪い方だ。
ますますそうなっている。
信頼する何人かのアーティストや
同業者とはオンラインで、あるいはリアルで、
密度の高い時間を共有している。
もともとひとの話を聴くのは好きな方だが、
ここ数ヶ月でますますそうなった。
この4週間、通常通りの出勤が始まって
朝の散歩が週2回くらいに減ったが
途絶えてはいない。
散歩中、いろんな色合いの紫陽花を見つけては
玉のような花をいちいち両手でさわってしまう。
ひとの顔を手でそーっと包み込む感じ。
白いやつがいちばんやさしい。写真はない。
今はみんな、そろそろ枯れかかっている。
隔てられること、
隔たってしまうこと、
過ぎ去ってしまうこと、
忘れ去られてしまうこと、
そういうこと全てに想像力が開かれること。
ゆっくり話せる人たちとは
いつもこの同じ星座をともに見上げながら
未だ見えない世界をそーっとさわろうとしている。
※連載の初回にも書いたが、上に登場する「信頼する何人かのアーティスト」のひとりが、当館で何度も踊っていただいている鈴木ユキオさんだった。どんな人で、館のどこでどんなダンスを?についてはぜひ以下のブログから10分インタビュー動画へ。アーカイヴ画像もたくさん。なるほど、「建築と自然とパフォーマンス」はセタビにとって不可欠のキーワードなんだな、ということもわかると思う。
ちなみにアーカイヴといえば、鈴木さん自身のアーカイヴサイトもすごい。公演の記録写真は言うに及ばず、チラシ画像から小学校などへのアウトリーチ活動から何から、記録がある。
「美術館再開日記」、連載初回はこちら。
美術館再開26日目、7/1。壁の向こうの窓を出す。
展示室の壁面をゴロゴロ動かして窓を出す。
ひっさしぶりだ。5年前に彫刻の展覧会を
担当した時に開けて以来かな。
冬だった。
実にひとの入らない展覧会で、毎日贅沢に
美しい冬の光の移ろいと空間全体の変化を
ひとりで楽しんでいた。
※実際はさすがに「ひとり」ではないのだが、確か1日に50人くらいしか入らない日もあった。それはこのコロナ状況での再開1週目と、実は変わらない。その企画展、「スペインの彫刻家フリオ・ゴンサレス ピカソに鉄彫刻を教えた男」(2015年)では「作品のない展示室」と同じ部分の窓を開けていた。当時のfb日記にあげた写真。↓
そういえばイベントページのアイコンには、扇形展示室の写真を使っていた。
初夏の今は、梅雨時の緑がシャッターの下から覗く。
しっとりしていてこれもとても良い。
館内のソファでは、ビジネスの打ち合わせを
しているらしき男性2人。
へー、ウチもそんなふうに使ってもらえるんだ。
都内のコロナ感染者数が70人近くとなり、
「作品のない展示室」がらみでも
また一から考え直すべきことが生じる。
しかしこの数ヶ月で慣れた。
本当に大事なことは手放さず、
どんどん次のかたちを探ることに。
美術館再開27日目、7/2。世代交代の風景。
都内のコロナ感染者107人。
「作品のない展示室」は「企画展」ではないが
「コロナの世界」に入ったあとで
当館が初めてつくる新たな「企画」ではある。
いろいろぶつかり合いがある。
実は世代交代にも重なっている。
難しいな、と思っていたような状況が
気づいたらひらけている。
気づいたら、というのは嵐の後に、
ということだけども。
で、気づいたら風景まで新鮮に見える。
今日は折しも梅雨の晴れ間だった。
緑がしたたる、って比喩じゃなかった。
「特集 建築と自然とパフォーマンス」、
映像用プロジェクタの吊り込み終了。
映像を上映してみたら思わぬ課題発生。
慌てず騒がず抜け道を考える。
明日には展示室の窓のシャッターを全部上げて
「作品のない展示室」の全体像を確認する予定。
嵐だのなんだのがあっても
この眺めを共有できて大事にできる限りは
大丈夫な気がしてくる。
美術館再開28日目、7/3。仕上がった。本当に作品がない。
都内のコロナ感染者124人。
「作品のない展示室」、仕上がりました。
最後の関門の館長チェック、
「おう、本当に作品ないんだな」。
ええ、ないですないです、なんもないです笑。
「特集 建築と自然とパフォーマンス」も
映像問題なんとか解決。なんとかなるもんだ。
夕方、同僚たちと外からの眺めを確認。
あらら、セタビ、現代美術やってるみたいに
見えちゃってまずいんじゃないの、わはは、と笑いあう。
ということで皆さん、コロナに用心しながら、
お運びいただければ。
おまちしています。8/27木曜日まで。
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