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展示室でお客さんと楽しく話せたこと。【美術館再開日記11】

「作品のない展示室」には、ふだんとはちょっと違う、多様な人たちがたくさん来てくれた。毎日展示室を回ると、時にはお客さんと話せたりする。作品のある展覧会場と違って、誰もがのびのびしている。自分もそのひとりだった。マスクはしていても、開放感が。

いっぽう、コロナ感染者数はまた増えつつあった。都内の感染者確定数(と言われるもの)を、アホくさいと思いながらも日記に書きつけるのが習慣になった。どうなるんだろう。夏の陽がさす展示室で、人々の動きと光の移ろいを眺めることも日課になった。

美術館再開35日目、7/11。ウキウキがこぼれる来場者と話す。

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都内のコロナ感染者206人。
「作品のない展示室」、来場者がぐんと増え、しかも層が若い。
20-30代中心。友人同士やファミリー。
静かながらウキウキ感が満ちる。

今日は男女3人組の若者と話ができた。
あのー、あそこの突き当たりの壁って
移動式で、何枚か収納されてるんですよね?

マスク越しにウキウキが漏れる質問に、
こちらもつられて楽しく答える。

はい、4枚あって。普段は壁と壁の継ぎ目は
目貼りしちゃって隠してるんですが、
今回は目貼りもせず、いかにも
「あーあそこからガーっと出てくるんだろな」
って空気を醸してみてるんです。

えー、おもしろーい!定番の壁の出し方とかって
あるんですか?

うーん、
どんな作品を展示するかによりますけど、
学芸員個人の好みもあります。
あの壁を出すと閉塞感がすごいので、
なるべく使わないで、もっと背の低い、
箱型の仮設壁を組む人もいます(=自分とか)。

はーなるほど、そうすると
空間が続いてることがわかりつつ、
仕切られるっていうか。
そっかー、おもしろーい!

美術とか建築関係の人たちではない、が、
どうもイベント運営で施工もやるような
お仕事、その仲間同士で来場した雰囲気だ。
ゼロから現場をつくるワクワクをきっと
知っている。

僕ら、美術館もけっこう好きで行くんですけど、
今回のすごいですよねー!
この部屋に入って、展示ケースが空っぽなのが
目に入って、ゾワってしちゃって。
あるべきものがない!頭バグりましたよ!

あー、そうですよね、そう思いますよね。
でも私たちにとっては、
「ない」ことって実は始まりなんですよ。
終わった展覧会の担当者にしてみれば、
「ない」のはちょっと寂しい。
次の展覧会の担当者にとっては、
「ない、よっしゃ!」で、始まりなんです。

へー、そんなこと考えたこともなかった!
そうなんだー。
むっちゃおもしろかったです、
お時間いただいてありがとうございました!

「特集 建築と自然とパフォーマンス」の
部屋に移って彼らが真っ先にチェックしたのは
「あの壁も可動壁くさい」と嗅ぎつけた
記録映像の大壁面の継ぎ目と、
プロジェクターの吊り方だった笑。
今日も緑が濃い一日。

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美術館再開42日目、7/19。大きすぎるキャンバスを持ったまま展示室に向かうおじさん。

都内のコロナ感染確定者ざっくり200人。

晴れ、家族連れで賑わう公園からセミの声。
みーんみん。短い。

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美術館もファミリーが次々にやってくる。
ベビーカーから降りた小さい子たちが
光と緑に向かって歩む。

一家4人がぎゅうぎゅうと
一台のソファに収まり、まったりしている。
そして今日に限らず、
若い男の子の二人連れもなぜか多い。

当館には区民ギャラリーというのがある。
一般の方々の発表のためのスペースである。

夕方、その区民ギャラリーでの展示撤収を終えた
Tシャツ短パンのおじさんのひとりが
なぜか自分の作品を持ったまま、ご家族とともに
「作品のない展示室」にわやわや向かっていた。

あまりに自然な動きで一瞬見逃したが笑、
20号くらいのはだかのキャンバス、さすがに
「大きすぎる手荷物」ゆえ入口で止められ、
家族一同、受付脇まで戻る。

ダンボールの「臨時預け荷物箱」にガサッと
はだかのキャンバスを突っ込むと、
おじさん&一家は再び悠然とわやわやと、
展示室に向かった。

いろんな人たちがいるが、
今回細かいことはほぼ気にならない。

箱からはみ出ている「手荷物」キャンバスには
えらく賑やかな色が塗ってあり、
受付脇でえらく目立っていた。

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