たまご
一番好きな食べ物は何か?
これは結構難しいけど、一番世話になった食品はお米をのぞけばおそらく卵と納豆だろう。でもアメリカにいた時期は納豆はなかったので、やはり一番は卵。
「完全食品」であり「物価の優等生」と言われる卵。白玉と赤玉があり、聞くところによると中身は変わらないそうだけど、どういうわけか赤玉の方が高級感があるような気がしてしまう。そしてやはり一般的な白玉は安価で手に入りやすい。
「〜曜日はゆで卵サービス」という飲食店もあれば、例えば韓国ではテーブル脇に卓上コンロと卵の入ったボウルがあり、自由に目玉焼きなどを作れる店も多い。
またアメリカなどと違って日本では生で食べられる。いわゆる「卵かけご飯」これが滅法美味い。しかしなんと言っても好きなのは半熟の目玉焼き。今にも消えそうなトロ火で10分かけて焼いた、ツルンとした白身にゼリー状の黄身。あるいは熱く熱したフライパンで白身の裏はガリっと焦げ目がつきながら黄身は箸を入れるとトロリと流れるもの。
よく目玉焼きには「醤油かソースか」という論争を聞くけど、いやいや、普通に塩胡椒でしょう?
ところが一昨年くらいから鳥インフルエンザの影響で卵の値段はかなり上がった。そしてそれ以上に驚いたのはサイズが小さくなったこと。
以前はスーパーに並んでいるのはL玉かLL玉でMなんて見たことなかったのに、今はMあるいはMSミックスが普通になっている。おそらくお菓子やマヨネーズなどの加工品用に回されていたものが一般用に出てきたのだろう。
「卵のサイズが変わっても黄身の大きさは変わらない」という話はひと頃よく聞いたが、これは誤った俗説で、黄身の大きさはサイズに比例する。おそらくMSサイズがあまり出回らなかったが故に流布されたのだろうか。
目玉焼きを作ろうとフライパンに割った時の黄身の小ささは、まるでこの国が貧しくなってしまった象徴のような気がした。
ようやく最近はサイズも価格も戻りつつあるようで、ちょっとホッとしている。
今まで一体何個食べてきただろう?そしてこれからも。
この楕円形のカプセルに入った小宇宙はいつも僕のお腹と心を満たしてくれた。冷蔵庫を開けて卵が専用のラックに入ってるだけで安心する。「とりあえず大丈夫だ」
精神的に参っている時でも納豆卵かけご飯か半熟目玉焼き丼を食べれば大抵の問題は解決する。もちろんその時は醤油だけど。
よく「〜を食べる時に日本人でよかったと思う」と言うけど、僕は卵を食べるだけで幸せになれる人間で良かったとつくづく思う。