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ラテンアメリカ冒険の書01-完成しない作品としてのgift-

初めに

2022年4月8日に、エクアドルのキトへ到着し、無事に活動がスタートした。
エクアドルでは、3ヶ月の間、アーティストコレクティブAl Zur-ichと協働して、ラトーラ(La Tola)、オヤコト(Oyakoto)、エスメラルダス(Esmeraldas)内の比較的安全な地域の3拠点にて、アートを介したコミュニケーションの実践を行なう。

本記事は、エクアドルでの暮らしの様子を交えつつ、エクアドルでのプロジェクトの一つ"Regalo"の2作品についてまとめる。

”Regalo”について
”Regalo”は日本で行ってきた《gift》の活動のエクアドルバージョン。giftはスペイン語ではregaloと言う。私がエクアドルに住む方に写真をいただき、その写真にまつわるエピソードを聞き、絵を描き贈る。そして、絵と交換する形でその方から好きなモノ・コトをいただく。
この活動は、貨幣を使った等価交換ではない、人とのやり取りのあり方を模索する方法であると同時に、私にとって相手を知る為の重要な手段である。
今回のプロジェクトRegaloでは、エクアドルの贈与観のリサーチとともに様々なモノ・コトの贈り合いを行っていく。


人と関わる中で感じる、独特の温かさ

エクアドル、キトに来て1ヶ月。出会う人々の温かさに毎日驚かされている。もちろんエクアドル人全員が〜などとまとめるつもりは無いが、とにかく贈ることが溢れていると感じる。世話好きな方に囲まれる独特の温かさに、実家の熊本を思い出した。
私が逆の立場だったら、こんなに気にかけたり、親切にできただろうか、といつも考える。初めは、なんでこんなに優しくしてくれるのだろうと不思議な気持ちさえあったが、そんな質問を投げかけるのが野暮に思えるほど、この場所では人に対して親切にすることが自然と根付いているのだな、と感じた。


Regalo1,2

エクアドルに来て最初に絵を描かせていただいたのは、ホームステイ先のご家族。滞在して間もない頃、作品集を見たホストファミリーが「滞在中食事を振る舞う代わりに絵を描いてほしい」と依頼をしてくれた。
(もしかしたら、以前私が「食事のオプションはいらない、自分でサンドウィッチを作って食べる」と言ったことを心配してくれていたのかもしれない笑、そう思うと心遣いに頭が上がらない…)

今回はA3サイズの作品を2つ制作した。日本での《gift》の活動から数えると53,54作品目となる。エクアドルで調達した画材の扱いに苦戦したが、長い制作時間の中で、頭が整理されていく感覚があったことも新鮮だった。

滞在中は日々食事をいただいていた。またそれ以外にも、エクアドルの魅力的な観光スポットや教会での演奏会、ホームパーティなどに連れて行ってもらうなど、本当に色んなモノやコトをいただいた。


等価交換の不可能性と、完成しない作品としてのgift

私は、絵を贈ることで今まで貰ったさまざまなモノやコトと等価の交換ができるとは到底思えなかった。しかし、それと同時に「これで良いんだ」という気持ちが芽生えていた。
この一回きりで返そうとしなくて良い。今後ずっとつながり続けるであろうこの方々とのやりとりの中で、お互いにとって良いと思える関係性を繋いでいけたら、それで良い。と思った。
そのように考えると、このプロジェクト”Regalo”は、活動内で制作した絵自体は完成はしているものの、これらの活動を、相手との豊かな関係を探るという”コト”として捉えたとき、このプロジェクトは完成することのない作品とも言えると思った。

まだまだ冒険は続く…!

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