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伝えられなかった想い…

___「さよなら」「ありがとう」
澄み渡った青空に向けて、声の限りそう叫んだ。
誰もいない河川敷にポツンと一人座ってみる。

どんなに声を上げたところで、きっと私の言葉は届かない。それでも叫ばずにはいられなかった。
もしかしたら風に乗せて、あなたが旅立った先に届くかもしれないから。

目の前に広がる空があなたと出会った日の空に似ていたから、どこかで繋がっていてほしいと願いを込めた。

数年前に入院先の病院で知り合ったそのおばあさんは、人一倍明るくて気さくな人だった。人見知りの私にも声をかけてくれて、太陽のような温もりを感じられた。そんなあなたのおかげで苦痛な入院生活に光が差し、辛いリハビリを乗り越えることができたのだ。

あなたが退院後も連絡をくれるたびに、私のことを覚えてくれているのだと安心した。病棟にいたとき、あなたに認知症の初期症状があることを偶然知ってしまったから。

それからいつか、あなたが私を忘れてしまう日が来るかもしれないと心のどこかで恐れていた。

私のことを本当の孫のように可愛がってくれて、一緒に笑ったり励ましてくれたあなたが大好きだった。いつか幸せになれる日が来るから、今は辛くても生きてと背中を押してくれた。そんなあなたのおかげで、私は強く生きようと心に誓えた。

だから、いつかまた会えることができたとして、そのときに「あなたは誰?」と言われてしまうのが怖かった。

あなたが家族に邪魔者扱いされていたことも、病棟から出られても自由に生きれないことも知っていた。けれど、他人である私にはどうすることもできなくて、そんな無力な自分に嫌気がさした。

時は移ろい、世間が未知のウイルスに翻弄される中、あなたがこの世を去ったことを人づてに聞いた。いつかまた会えるから、さよならは言わないでおこうねと約束してくれたのに、結局その後再会することは叶わなかった。

悲しみ、後悔、悔しさ……言葉にできないたくさんの想いが込み上げてきて胸が苦しい。

死ぬときに幸せな人生だったと思えたら、それでいい。そう言ってくれたあなたは、笑って最期を迎えられただろうか。この世から解放されて、自由になれただろうか。

私はもう少し自分の限界に挑戦してみたい。いつかどこかの世界でまたあなたに巡り会えたら、「私、強くなったよ」と胸を張って顔向けできるようになりたい。
だから……その決意をあなたへの餞にします。


___音楽と人の記憶は強く結びつくらしい。
それを知ったときに一番最初に思い浮かんだのが、今回のできごととLiSAさんの「炎」でした。思い返すとたしかに、この曲を聞くとあのときの記憶が蘇るという感覚に包まれる気がします。音楽の力は偉大だなと改めて思い知らされました。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました!



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