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解くべき問題をいかに定義するか

上記noteの中でいくつか課題の例をあげました。

「我々のサービスはアメリカでは伸びてるのにヨーロッパで伸びないのでなんとかしてほしい」
「マッチングしたあと会話が始まる率が低いのでなにか施策をうちたい」
「我々のサービスを使うユーザの体験を何らかの方法で改善したい」
「競合が出てきてやばいからなんとかして!!!」

これら、なんとなくで書いてみたのですが粒度が結構バラバラなんですよね。(個人的にはこの考え方はあまり好きではないのですが)「デザインは問題解決だ」なんて言われる事もありますが、問題解決に取り組むためにはまず問題を適切に定義する必要があります。そして問題の定義が適切でないとプロジェクトは一瞬で破綻します。

例えば「もっと良い階段をデザインする」という内容のプロジェクトに関わったとしましょう。既存の階段についてリサーチをしたり、議論を重ねて良い階段とはなにかに考える事になるのでしょう。例えば素敵な装飾を手すりに付けたり、各ステップの素材を工夫したりするかも知れませんし、下記のビデオのように、階段をピアノに見立てて利用者に楽しさを提供するというアプローチも良いですね。

https://www.youtube.com/watch?v=2lXh2n0aPywから引用)

もしくは、そもそも人が歩くのって大変じゃない?みたいなアイディアから自動で動く階段(つまりエスカレーター)を考えつくかも知れません。

https://pixabay.com/photo-283448/から引用)

でも、解くべき問題が「もっと良い階段をデザインする」ではなく「人々が他の階に行くもっと良い方法をデザインする」だったらどうでしょう。そもそも階段のメタファにとらわれなくて良いわけですから、エレベーターのように人が箱の中に入って箱が上下するような仕組みを作っても良いわけです。

https://pixabay.com/photo-2540026/から引用)

もしくは、上から下に行くことに特化してしまいますが、消防署にあるような滑り棒を考えても当然良いわけです。

https://life.tw/?app=view&no=155050から引用)

エレベーターや滑り棒のようなアイディアって「もっと良い階段をデザインする」と言う問題を解こうとしてもなかなか出てこないのかなと思います。

同様の例だと「新しい花瓶をデザインする」という問題があったとすると出てくる答えはおそらく形や色、素材など工夫された様々なオブジェクトでしょう。だけど解くべき問題を「花を使って生活に彩りを与える方法を提案しなさい」とすれば花瓶以外にも様々なアイディアが出てくるに違いありません。

もうひとつぐらい他の例をあげましょう。例えば「新しい水筒をデザインしなさい」という課題。色や形、機能などを工夫することで新しい水筒を作る事はもちろん可能でしょう。だけど、そもそも問題を捉え直す事も出来るはずです。

水筒というのは人が長時間活動するために必要な水分を補給するための仕組みなわけですから「人が安全な水の無いところで活動するための方法をデザインしなさい」と定義してもよいわけで、例えば下記はtakramのプロジェクトなのですが、「じゃあ人間が水を飲まなくても生きていける身体を考えてしまおう」という答えを提示しています。

とはいえただ単純に、問題を大きく再定義すれば良いというものではありません。「より良い階段をデザインする」という問題設定の仕方では出てくるアイディアが限られてしまうということは上述した通りですが、かといって例えば「人々が快適に利用できる建物を提案する」と問題を定義しても、そもそも何を提案して良いのかわかりませんし、様々な方向から浅いアイディアがポツポツと出る程度で時間切れになってしまうでしょう。

デザインプロジェクトにおいては多くのリソースをそもそもの問題設定に割くことが珍しくありません。これはつまり問題を適切に設定することが大変重要であるということ、言い換えれば、解くべき問題をえいやで設定するのは大変危険であると言うことです。では、どのようにして問題を設定すればよいのか?それについては今後、このnoteで書いていきたいと思います。

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