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『柔術上達論』コンセプト

『柔術上達論』明日発売です。

2012-2016年にかけて出版した『寝技の学校』シリーズは、
今までの技術書のように、技を羅列するだけではなく、
それぞれの動作について「なぜそれをするのか」という
原理原則から説明したい、というコンセプトで製作しました。

今回の『柔術上達論』はその題名の通り、
効率的に上達するためにどうすればいいのか、
ということを徹底的に考えて、今の私ができる限りの形にしたものです。


初心者さんからよくリクエストされます。
「とにかく、よく効くパスガードを教えて下さい」

30年間この問いに取り組んできた結果、現在の僕が出した答えは、
「相手が自分より弱ければどんなパスでも成功するし、
 相手が自分より強ければどのパスも効かないんですよ。
 だから、
 自分より弱い人が入会してくることを待つか、
 まずは自分と一番実力が近い人を追い越すしかないですよね」ということです。

柔術は対人競技なので、これが根本にあります。

テクニッククラスで、黒帯さんに、とあるパスを説明された後、
実際のスパーで、黒帯さんがそのパスで相手をさくっとパスしているのを見ると、

「自分もそのパスを使えるようになれば、同じように相手をパスできるはずだ」

と思ってしまうかもしれませんが、
それは単に実力差があるから成功しているだけの話です。

その黒帯さんも試合に出て自分と同じ強さの人を相手にすると、
そんなにさくっと成功させれないはずです。

偉そうにこんなことを書いている僕も、自分と同じくらい強い人と練習をすると、
まったく技が通用しないので、悲しくなりますし、
強い人と練習をすると、なにをどうしたらいいのか、なんでこうされてしまうのかが
かわからないまま、めちゃくちゃにやられます。


僕のことはさておき、すべての愛好者が抱えている本当の問題は
「どうやって上達していけばいいのか」ということになります。

その具体的な内容は、本書にありますが、かいつまんで説明すると

技を知らない人は、まずは基本技の名前と動きを覚える。
それをしないと、コミュニケーションが取れないので。

それらを覚えたら、あとは基本的には、その技を使うことは考えず、
相手をコントロールすることを目指します。

まずは攻められるでしょうから、それを止める。
相手を止めれるようになったら、はじめて
ポジションを戻したり、進めることを考える。

多くの人は「自分が技を使う」ことに固執するので、コントロールを失うのです。
技は相手が使っていますから、まずはそれを見たりされたりして、
どう使うかを相手から学びましょう。
自分がされていると、より、よく分かるでしょう。
技の形を知っていることと、それをどう使うかというのは全く別物なのです。

このように相手をコントロールすることと、技の使い方を理解した時に、
やっと自分も相手に技をかけることができる、とお考え下さい。
なぜなら、あなたはその人より強くなったからです。
これが上達です。

でも、その頃には「自分があの技をかけた」というより、
「相手へのコントロールを強めていったら、自然とこのポジションになった。
 振り返ると、この一連の動作は、あの技のことだな」という現象になります。

そして、インストラクターに対する質問は
「このポジションで、このようにしたいのに、相手がこのようにしてきて上手くいかない。どうすればいいのでしょう?」
という具体的なものになるでしょう。

そうなると、インストラクターは、同じ道を先に辿ってその人なりの回答を得ている者ですから、
あなたを同じ道を辿ってきているかけがえのない同志とみなして、その人なりの見解を説明してくれるはずです。


『寝技の学校』も今までにないコンセプトの本だったので、
鈴木章太郎さん(故人)に2009年に出版のお願いをしてから、
何度も企画を練り直し、撮影もやり直し、形にすることができたのは3年後でした。

今回の『柔術上達論』はそれ以上の難産でした。
日貿出版の下村さんに2019年にお話をさせていただいてから、
出版までにやはり3年弱かかりました。
2019年の前に、何回か別の出版社からの出版の話もいただいていたので、
そのたびに原稿をまとめて、話が流れては、また原稿を付け足して・・・・
と、完全にスパゲッティ状態になってしまっていた僕の原稿を、
新たな視点から切り分けて整理していただいた下村さんには
深く感謝しております。


以上、ご興味のある方には、ご一読をいただければ幸甚です。

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