嘘をつけるようになった話
幼い頃、母親が嘘に厳しかった。嘘をつくことがなによりも最も悪いことであると教えられた。暴力を振るわれるようなことは一切なかったが、存在を無視されるような叱られ方をしたことはあった。恐怖だった。それも嘘が原因だった。
憶測も嘘に含まれていた。買ってもらったばかりの虫眼鏡を紛失し、日頃意地悪をしてくる女の子が持っているのを見たような気がした。なくしたときにそれを伝えると、母親の怒りはとんでもなかった。なくしておいて人のせいにするような嘘をつくとは何事だと思われたのだろう。今もあれ