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65歳からの出発

先月亡くなった父の本を整理していたら、「勢古宗昭画集」という本が出てきました。
あとがきを読んで驚きました。

私は以前から勢古浩爾さんのファンでした。
彼は洋書輸入会社に勤務し、文筆活動に入ったのですが、その無骨な芯の通った硬派な論評やエッセイが大好きです。彼の書評を読んで購入した本は数知れません。


彼のお兄さんが画家だったとは知りませんでした。勢古宗昭さんは念願のこの画集を65歳で上梓後に急逝されたのですね。
ロンドンの美術館巡りをし、ターナーの絵などに感銘を受けて帰国当夜の日記にこう記されたそうです。

「人生我以外すべて師。我がまだ未熟だということを改めて確認しよう。65歳からの出発だ。言い訳無用。精進あるのみ」

うん、これを読んでやはり彼のお兄さんだなあと思いました。

父は彼の弟が作家であることを知っていたのでしょうか。
そのことをあるブログに書いたら、管理人さんが勢古浩爾さんに連絡してくれ、ご本人からのコメントをメールしていただきました。

「長野さんのコメント読みました。懐かしいものを思い出させていただきありがいことです。
長野さんのお父上にお礼を申し上げたい気持ちです。勢古」

もし父がこれを読んでいたら、何と言ったのでしょうか。
いつものポーカーフェイスで

「あー、そげかー」

と飄々としていたかもしれません(笑)。

勢古浩爾さんはあとがきにこうも書いています。

「志半ばで斃れたとはいえ、前向きの姿勢だけは最後まで失うことがなかったということだけが慰めです。たぶん、無念はあったでしょう。けれどその潰えた夢も含めて、人生とはそういうものであり、それだけですでに完璧である、と思いたい気がします。」

ありがとうございました。



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