学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話
主人公のさやかちゃん。strongを日よう日と訳し、聖徳太子をせいとくたこと読み、鎌倉がどこにあるかも知らないどころか東西南北もわからない高校二年生でした。当然成績は学年ビリです。
ある日彼女は著者が経営する塾に入塾してきました。著者はどんな子でも叱ったりしません。また自分を叱る大人が現れたと思ってしまうからです。最初の面談でひょんなノリから慶應大学を受験することになりました。
著者は彼女の学力を小学四年と判断したのにもかかわらず、です。思わず、今の小四はもっと知識があるやろ、とツッコミを入れたくなります。
さやかちゃんの両親は不仲でした。しかし母親は彼女なりの子育て論を持っていました。
「子どもには絶対に腹を立てない、叩かない」
「世界中が敵になっても、我が家だけは絶対的に味方だと思える家庭を作る。怖い親にはならない」
「どんな時でも愛情をかけ続けることで、感謝できる子に育てる。感謝できたら幸福感が得られる。それが人にとって一番の幸せではないか」
などです。そんな彼女の教育方針は周囲から子どもを甘やかしていると非難されますが、著者は長年の指導経験と心理学の成果から彼女の哲学に賛同します。
著者は彼女に適したと思われる様々な勉強方法を提示して(しかも決して叱らず褒めながら)、勉強を教えていきますが、受験半年前にして模試の慶應大学の合格判定はEという絶望的なものでした。
大学受験生70万人として慶應の合格安全圏に入るためには偏差値70以上が必要です。つまり上位2%、一万四千番以内ということです。偏差値30の彼女が慶應に合格するのは奇跡に近いというか、まず不可能です。でも著者は言います。
「ダメな人間なんていないんです。ただ、ダメな指導者がいるだけなんです」
私も最初は彼女の無知さに笑っていましたが、読んでいるうちに気づきました。
無知なら自分も変わらないじゃないか。
どこからが無知でどこからが無知ではないのか。常識というものか。その線引きはどこなのか。
読み進めていくうちに何度も涙がにじんできました。彼女は少なくとも向上心があります。そして変なプライドがありません。普通の子は「ヘイアンキョウさんって何した人?」なんて聞けませんし、ましてや偏差値30で「私、慶應に行く!」なんて周囲に公言できません。
彼女から合格を聞いた著者は電話を切ったあと、手が震えて仕方がありませんでした。受験を決意してから一年半後のことでした。
大学卒業後、著者に宛てた手紙の中で彼女は書いています。
「何か死ぬ気で頑張る、って人生めちゃくちゃ変わるんだなって、体験してみて思います。人生なんて、自分次第でいかようにも変えられることを学びました。頑張るって意外といいもんでした」
ある人は彼女が慶應に合格した時に、「もともと頭がよかったんだ」と言ったそうです。
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