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事業所からみた在宅医療のお金の話

前回は利用者さんや患者さんから見た在宅医療のお金の話についてお話ししました。


今回は事業所から見た在宅医療のお金の話をしたいと思います。

私は訪問リハビリスタッフとして働いています。
そして、事業所から「1日7件(リハビリ時間は40分)の利用者さんを回る」という目標を設定されています。この目標の達成状況は、私の来年度の昇給やボーナスにも影響します。そのため、たくさんの利用者さんを担当し、リハビリを行おうという気持ちになります。

しかし、その結果として、不必要な方にも訪問リハビリを提供することになっていると言う側面もあります。例えば、前回お話したように「無料だからやる。」「安いからやる。」と言う考えで、あまりリハビリ自体はやる気のない利用者様は一定数いらっしゃいます。目標達成のために、そのような方にリハビリを行うケースが出てきていることも確かです。しかし、そうなると国の社会保障費はどんどん圧迫されてしまいます。

一方で、必要な方だけにリハビリを提供しようとすると、私の目標は達成できません。事業所としては多くの利用者さんにリハビリを提供したほうが収益が上がります。


では、1人1人のリハビリの料金をもっとあげればいいんじゃないかと思う方もいるかもしれません。しかし、現在の診療報酬の制度で訪問リハビリの料金は決まっているため、事業所の判断で訪問リハビリの料金を変更することはできません。
ちなみに訪問リハビリの料金は、ほとんどの場合、時間で決まっています。(たいていの場合20分単位)そのため、とてもしっかりリハビリを40分行った場合と、のんびりリハビリを40分行った場合も同一料金ですし、1年目の新人が行う場合も30年目のベテランがリハビリを40分行った場合も同一の料金です。40分で行っていた内容を、効率良く20分でやったとしたら、半分(20分)の料金しか事業所には入らないことになっています。そのため、素晴らしいリハビリを提供しても、効率的なリハビリを提供しても、収益は上がらない仕組みになっています。
現在、終末期ケア専門士と言う資格にチャレンジしていますが、資格をとっても、事業所の収益は変わりません。つまり、私たち訪問リハビリスタッフの努力で収入を増やすと言うことは、なかなか難しい現状なのです。

この話をすると、「不必要な医療や介護をしている。」「我々の社会保険料を無駄に使っている。」などと、不快に思ったり、嫌悪感を抱く方もいらっしゃるかもしれません。私としては、あまり話したくはない内容でした。しかし、皆さんにこの事実を知っていただきたいと思い発信させていただきました。私自身は、訪問リハビリを含め在宅医療介護サービスと言うのは必要な人に必要な分だけ行いたいと思いますが、今の制度ではそれは難しいです。(私は経営者側でも管理職でも無いので、事業所の収益について詳しく分かっていないことを前提で聞いてもらえたらと思います。)このジレンマを抱えながら私は働いています。医療保険制度、介護保険制度はとても素晴らしい手間ですが、ある程度、自由診療になった方が介護保険の分野では良いのではないかな、と思う部分もあります。例えば、利用者様からの評判が良いスタッフや事業所の報酬を上乗せするなど。その方が、利用者様も事業所もwin-winだと思います。

ちなみに、訪問リハビリを行う場合、医療保険で行う場合は、医師の指示書が必要ですし、介護保険で行う場合は、医師の指示書とケアプラン(ケアマネージャーが作成)が必要です。そのため、医療保険で行う場合は医師、介護保険で保険で行う場合は医師とケアマネが「この人には訪問リハビリを行う必要がある。」と思って指示を出さなければならないため、最低限のラインは守られているとは思っています。例えば、健康で介護も全く必要ない人は、きっと医師は指示書を出さないと思いますので、そのような方は、訪問リハビリを受けることはできません。

本日は、事業所からみた在宅医療のお金の話をしました。
訪問リハビリは、皆さんからの税金や社会保険料で成り立っている面を忘れず、できる限りのリハビリを提供していこうという気持ちで、私は働いていきたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

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春野 さとみ【理学療法士×ワーママ】
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