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名誉の寝不足

夜の救急病院へ
息子を迎えに
彼は青白い顔で
黒いリュックを抱え
車椅子に座って待っていた

私は何も言わず
ただ彼の頭を撫でた
「すまない…」と
彼は短く言った
毎日ギリギリの睡眠時間で
家事と仕事を回している私に
迷惑がかかることを
謝ってくれたのだ

聞けば通学している夜間校の
授業が始まってから頭痛が起き
自習時間の課題をしながら
何度もトイレへ吐きに行った
家まで持たずに
学校近くのターミナル駅の構内で
吐いて動けなくなったと
吐いていたのは胃液と胆汁だったと

私は入浴直前に
ようやく病院からの電話で知り
旦那と車で駆けつけたのだった

今の私に睡眠はとても重要
でもそれ以上に
息子が大事だ
翌日は確かに寝不足でぐらぐらだった
でもこれは
大事なものを大事にできた
「名誉の寝不足」だ

ありがたいことに
大事な彼は少しずつ良くなり
翌日には普通に過ごせていた

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