Come again
富山GRNサンダーバーズファン感謝祭。
これで本当に今季所属選手達とはサヨナラ。
阪神タイガース支配下ドラフト5位で指名された佐野大陽選手へのお祝いムードに包まれ、サインや記念写真を求めるファンの方々の列が長く伸びる中、自分には短さを感じる三時間の、濃密で意義深い時だった。
開催挨拶から始まり、ファン参加のジェスチャーゲームや選手達の特技披露、球団公式よさこいチームみんとの演舞などで笑顔と笑い声が響き渡り、賑やかな雰囲気に包まれる。
普段は鷹の様な鋭い目で白球を見つめ、厳しい顔つきをさらす選手達だが、今日はそこら辺の兄ちゃんと変わらぬ、二十代の青年。
歌う曲目は違うものの、世代を超えあの頃の筆者と同じ羽ばたきぶりに口元が緩む。
ひとしきりヒートアップした時間を過ごした後は休憩時間を挟み、ドラフト指名を受けた佐野大陽選手の御礼と退団選手達の挨拶。
川渕有真、水野琉唯、下司凱世、林悠太、横井文哉投手、東田汰一捕手、松重恒輝、今釘勝、吉本光甫、武部拓海、石橋航太、墳下大輔選手の言葉、監督やコーチ、球団スタッフ、ご両親、ファンへの感謝の念が続く。
偶然にも筆者は退団する選手達の真後ろの席に腰を下ろしたが、左斜め前に座るキャプテン松重恒輝選手の姿が焼きつき、しばらく目を逸らすことが出来なかった。
彼の背中が全てを物語っていた。
吉岡雄一監督にありったけの感謝を伝える彼の退団スピーチに期せずホロリと涙をこぼしたが、それ以上に、他の退団選手のスピーチに堪えきれず、うなだれる後ろ姿には独立リーグの非情さと酷薄さを垣間見た。
毎年、チームの半分の人間が去る。
どれだけ残って欲しいと願っても。
出来るだけ、時間が許す限り、選手一人一人と今後の去就進退やオフシーズンの過ごし方を訊いて廻り、ここでは書ききれぬほど話をした。
わざと笑顔を作り、冗談を言い、肩を叩き、握手をした。
「来年もスタンドで大きな声を張り上げているから。見かけたら、いつでも声をかけて。」
選手達はそうしますと頬を緩めた。
全てのイベントが終了した後に発表された2024年度選手実使用ユニフォームオークションは、惜しくも今年はドラフト指名を逃した三好辰弥選手の一枚を落札出来た。
”井戸の茶碗”を手に入れた嬉しさは、自己満足感の塊だが、これでまた来季スタジアムに頻繁に足を運ぶ理由が加わった。
ユニフォームに直筆サインをしてくれた三好選手は
「来年もチームに残ります。」
と力強く答え、自分に足りなかったモノをしっかりと把握していた。
バッティングはもちろん、盗塁、走塁の嘗試を増やす事。
来年はリーグ優勝はもちろんの事、独立リーググランドチャンピオンシップでの栄冠を。
そして退団する監督、選手の皆さん。
スタジアムにcome again(また来てね)。
遠くに姿が見えた瞬間、「オー!」と声を上げながら、握手を交わすシーンを思い描いていますから。
(写真は全て筆者撮影)
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