CADDiで求められるエンジニアリングマネージャの越境力

はじめまして。CADDi Technology本部 Manu Tech部 エンジニアリングマネージャの西名(@mikesorae)です。

CADDiには2022年9月に入社し、以降プロダクトの実装にも関わりながら徐々にエンジニアリングマネージャとしての職務領域を広げています。

CADDiを選んだ理由として、製造業というマーケットの大きさ、実際にモノを取り扱う複雑なビジネス領域での問題解決への挑戦、会社やサービスの成長フェイズにより深く関われる経験等がありました。実際に入社してこれらの問題に向き合う中で、改めてエンジニアリングマネージャの仕事が何かを考える機会が多くあったので、この記事を通してご紹介できればと思います。

エンジニアリングマネージャの仕事

エンジニアリングマネージャの仕事が何であるかについて、既に数多くの書籍やブログで語られていますが、これだという答えはないのが実情です。
一般的にはピープルマネジメントを軸足に、テクノロジーのマネジメントや人事制度設計や組織設計に職責を持つケースが多いようです。

手っ取り早くエンジニアリングマネージャの仕事やキャリアについて学びたいのであれば、「エンジニアリングマネージャのしごと」や「エンジニアのためのマネジメントパス」等を読むのが良いと思いますが、これらの書籍では主に人や組織とどう向き合うかといった問題がメインテーマになっています。

僕個人としてはエンジニアリングマネージャの仕事はもっと広い範囲に及ぶと考えており、広木大地さんの記事「エンジニアリングマネージャ/プロダクトマネージャのための知識体系と読書ガイド」にある「弱めのEM定義」「強めのEM定義」のように、エンジニアリングマネジメントの領域を広げていくにつれてプロダクトマネジメント・プロジェクトマネジメント・テクノロジーマネジメント・ピープルマネジメントの領域にも足を踏み入れていくことになると思っています。

本記事では、僕個人が考えるエンジニアリングマネージャ像を元に、CADDiで求められるスキルやマインドセットについて考えたいと思います。

エンジニアリングマネージャのミッション

エンジニアリングマネージャの仕事については様々な定義や考え方がありますが、エンジニアリングマネージャに求められるミッションとはなんでしょうか。

僕は、一言で表すならば「ソフトウェアエンジニアリングに関わる資産の最大化およびコストの最適化」だと考えています。

エンジニアリングマネージャは、ソフトウェアエンジニアリングにおける有形資産や無形資産の最大化とコストの最適化を通じて事業会社のProfit and Lossの改善に貢献します。ピープルマネジメントはそのうちの人的資産や組織のナレッジや文化といった無形資産の最大化に貢献するためのHowの一つという位置づけだと考えています。

ソフトウェアエンジニアリングにおける有形資産としては例えばソフトウェアや開発機材等が含まれます。一方で、無形資産としては開発プロセスやナレッジ、チームの文化といったものが考えられます。プロダクト開発組織はこれらの資産を使って付加価値を生み出し、それをProfit and Lossという形で事業に還元します。また、個別具体の話をすると、必ずしもソフトウェアを資産計上したり機材を増やすことが良いとは限らないため、時には資産の見直しやコストの最適化も求められます。

エンジニアリングマネージャの事業貢献のメインパスはピープルマネジメントを通じた無形資産の改善によるProfit and Lossへの貢献ですが、実際にはそれ以外のマネジメント領域にも少しずつパスを持っており、テクノロジーマネジメントやプロダクトマネジメントを介して中長期的な資産の最大化にコミットします。
余談ですがテックリードやプロダクトマネージャもそれと同様に、それぞれメインの職責はプロダクトマネジメントやテクノロジーマネジメントですが、相互にそれぞれのマネジメント領域に染み出しながら資産価値や事業価値の最大化にコミットします。

エンジニアリングマネージャの事業貢献パス

エンジニアリングマネージャとしてより大きなインパクトを生み出すためには、ビジネスの理解を通じてプロダクトマネジメントに影響力を及ぼしたり、組織におけるテクノロジーのあり方についてTech LeadやCTOと意見交換し、既存のソフトウェア資産の機能的あるいは品質的価値を向上させたり、より効率的な開発プロセスを取り入れて開発組織のスループットを改善したりする必要があります。そのためには、組織や職能の垣根を越えてコミュニケーションする能力が必要です。

本記事ではこのマインドセットやコミュニケーション能力を総称してエンジニアリングマネージャに求められる越境力とし、CADDiで求められる越境力について解説していきます。

事業における越境

CADDiには、部品調達プラットフォーム「CADDi MANUFACTURING」と図面データ活用クラウドサービス「CADDi DRAWER」という2つの事業があります。
これらの事業はそれぞれ独立していますが、MANUFACTURINGで得られた知見をDRAWERにインプリメントして世の中に価値を提供し、DRAWERの価値を更にMANUFACTURINGで活用することで部品調達のプロセスを改善するという、相互にシナジーを生み出す構造となっています。

CADDi MANUFACTURING事業とCADDi DRAWER事業

そのため、事業部間の情報流通は組織戦略上重要な要素となります。

エンジニアリングマネージャとしては、各事業部の戦略を理解した上で、その時点で最適な組織設計、人員配置、技術戦略策定ができるよう、各事業部に情報を伝達する役割が求められます。

部門における越境

製造業のバリューチェーンは非常に長く複雑で、CADDiが深く関わっている製品調達(部品調達)もまた例外ではありません。

製品調達のプロセスはクライアントからの見積り依頼から始まり、図面や製品仕様ドキュメントを受領し、部品の仕様や加工方法のすり合わせを一つずつ行った上で、製造コストや製造リスクの見積りを行います。この際、CADDiでは図面上の製品をBOM(Bill Of Materials)と呼ばれる部品表に分解し、製品ごとに必要な部品や材料、加工工程の分析を行っています。

次に、製品や部品の調達を行うために、クライアントが期待するQCDを満たすようなサプライチェーンを構築する必要があります。このプロセスでは、製品ごとに製造可能なパートナー企業を選定し、価格や納期を調整します。

実際に製品を生産する工程では、生産管理によって製造全体のQCDをコントロールします。生産計画ではクライアントからのインプットや過去の受発注傾向から需要を予測し、MRP(Material Requirements Planning = 資材所要量計画)によって何を、いつ、どれくらい発注するかを決めます。また、製品によっては受注を受けて初めて生産を開始する「受注生産」や、一定のリピートを見込んで予め生産しておく「見込み生産」があり、製品ごとに生産計画や在庫の管理を考える必要があります。

具体的な発注量や発注先が決まると、次は製造工程に移ります。CADDiでは実際の製造工程はパートナー企業に委託していますが、SPP(Supply Partner Portal)という内製プロダクトを利用してパートナー企業と発注や出荷のステータスを共有したり、Birdieという内製プロダクトによって検査証憑の管理を行っています。
また、CADDiは国内外に複数の倉庫拠点を持っており、製品の検査機能も有しています。検査工程では、検査指示書や図面を見ながら穴あけ、寸法、表面加工、場合によっては専用の装置を使って幾何公差(丸さや平面度といった形状的な許容度)のチェック等を行っています。また、各倉庫拠点ではPolarisという内製プロダクトを通じて、どの製品のどのロットが入荷/出荷されたか、今どれだけの在庫が存在するか等も管理しています。

これらの一連の流れを経て、ようやくクライアントに製品を届けることができます。もちろんここに記載したのは全体工程のほんの一部で、実際には更に細かな工程があり、数多くの業務ツールが使われています。

CADDi MANUFACTURING事業では他にも見積りを行うQuipu/SQや、見積・受発注を行うKlein、図面データへのアノテーションを行うMO2Dなど、様々な内製プロダクトを持っています。また、バリューチェーンごとに異なるオペレーション部門やドメインのエキスパートが在籍しています。そのため、各プロダクト間の連携や全体最適を考える上では、部門やチームを超えてコミュニケーションをとる必要があります。

プロダクトマネジメントにおける越境

事業とプロダクトは一蓮托生なので、どれだけ良いソフトウェアを作ったとしても、事業そのものがうまく行かなければチームに対する投資ができず、エンジニアや組織のパフォーマンスを改善できないということが起こり得ます。
そのため、プロダクトと事業がどれだけ密接に紐づいているか、プロダクトがどれだけの価値を生み出しているかは、良いプロダクト開発組織を作る上で最も重要な前提条件の一つとなります。
(もちろん売上に直接紐づかないけどオペレーションやガバナンス上重要なプロダクトというのも存在し、そういった場合は都度投資判断を行います。)

チームやメンバーの成果が出にくい場合、時にはこの前提条件を疑い、事業やプロダクトのあり方、考え方そのものを動かしにいく必要があります。
例えば、CADDiはこれまでの事業の急成長の中で生まれたペインを解消するために、多くのプロダクトを生み出してきました。しかし、これまでの経験を通じて、今よりも最適な選択肢があることもわかってきました。このようにプロダクトの根本的なあり方を変える必要がある場合、事業部のステークホルダーやプロダクトマネージャーと議論しながら、プロダクトの意思決定をリードすることが求められます。

テクノロジーマネジメントにおける越境

CADDiには現在国内外含め80名近いエンジニアが在籍しています。
この人数規模になると、技術スタックやソフトウェアの品質、サービス間のインターフェースが大きな開発ボトルネックになることがしばしばあるため、複数の開発チームのアーキテクトやテックリードと連携しながらテクノロジーをマネジメントすることも求められます。

チームごとの技術的な議論を促し、課題へのフィードバックを行うことはもちろん、部門間での課題共有を通じてエンジニア組織全体の技術力向上に貢献します。

開発ロケーションにおける越境

CADDiは現在タイ、ベトナム、アメリカにも支社を持っており、そのうちベトナム支社では独自の開発チームも持っています。
ベトナムの開発チームでは、MANUFACTURING事業で利用している一部のプロダクトの開発・運用や、ベトナム語向けの画像翻訳ツールといった独自の開発も行っています。
日本との時差は2時間程度ですが、言語や地理的な壁を越えて共にプロダクトを作っていく体制や仕組みづくりが求められます。

おわりに

エンジニアリングマネージャの職責をどこまで求めるかは企業や組織によりますが、ソフトウェアエンジニアリングに関連するあらゆる資産の最大化とコストの最適化がエンジニアリングマネージャに求められる一番のミッションだと僕は思います。そして、それを実現するためには様々な垣根を飛び越えて関係者に働きかける知識や行動力が求められると僕は考えています。
単なるピープルマネージャーと聞くとエンジニアリングマネージャの面白みは感じないかもしれませんが、CADDiではより高いレベルのエンジニアリングマネージャを目指すために必要な環境が多く揃っていると感じます。

エンジニアリングマネージャとしてCADDiのミッションの実現やプロダクト組織の成長に関わりたいと感じる方がいらっしゃいましたら、ぜひ下記リンクからご応募ください。

その他にもプロダクトマネージャ、ソフトウェアエンジニア、セキュリティエンジニア等様々なポジションを募集しています。
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