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day25―自閉症児は目を意図的に避けている、わけではない?

医学的なトピックを。

Moriuchi, J. M., Klin, A., & Jones, W. (2016). Mechanisms of diminished attention to eyes in autism. American Journal of Psychiatry, 174(1), 26-35.

自閉症児が目を意図的に避けているかどうか、アイトラッカーで検証。

背景

自閉症スペクトラム(ASD)の診断として、他者の目を避ける傾向を測定する方法がある。しかし、目を避ける理由がaversionなのかindifferenceなのか、決着はついていない。aversionとは意図的に目を避ける傾向があるとする説、indifferenceとは目が有益な情報源であると知覚できないために、目を見ないという説である。本研究では一連の実験でどちらかなのかを明らかにする。

実験

26人のASD児、38の健常児、22人の発達遅滞児で、人が見つめる映像を見たときの視線をアイトラッカーによって計測した。平均年齢は24.9ヶ月であった。ASDの診断は初期検査においてDSM-IV-TRの基準に当てはまるかどうかで検証した。
今回の実験では、顔の映像が出てくるが、その前にキューとしてマーカーが(implicitな刺激として)提示される。そのマーカーに促されることで目を見つめると考えられる。もし意図的に目を避けるのであれば、マーカーに促されても見つめる頻度は変わらないはずである。そうでないならば、マーカーに促されることで見つめる頻度が高くなるはずである。(他にも多くの要素を一連の実験で検証していた)
結果、見つめる頻度はASD児でも健常児でも変化がなかった。ただし、健常児のほうがASD児より目を固定して見つめる時間は長かった。

考察

2歳児での実験で、ASD児が目を避ける傾向はindifferenceなものであることが示唆された。
しかし、今回の実験はASDのaversionな傾向を必ずしも否定しない。大人になるに連れ、ASD者が不安症になる傾向が高い。このことから目に対する恐怖感が、発達するに従って培われる可能性もある。

所感

確か自閉症で有名なテンプル・グランディンさんも、目を意図的に避ける傾向があるというようなことを話していた気がする。それを考慮すると、この実験はそのような説を覆したのかもしれない。
ただし2歳児での結果であるから、大人になるに連れ後天的に目を避けるようになる可能性は否めない。人間は、「目」から他者の何を把握しているのか。それを体系的に明らかにすることで、ASD者にも目を怖がらずに対処できるようになるような「教育」が実施できるようになるのではないだろうか。

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