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day20―自閉症者の視覚特性に基づく「コネクトパシー」論

Connectopathy in autism spectrum disorders: a review of evidence from visual evoked potentials and diffusion magnetic resonance imaging

自閉症者の脳は「機能的結合異常」であるという論文。日本の研究者。

背景、前提知識

自閉症(ASD)は社会的コミュニケーション、インタラクションの障害を特徴とする。
ASDの脳を調べた死ぬほど論文あるが、今回は独自に視覚特性について調べている。

ASD者に限らず、人間の視覚野というのは複雑で、写真のようにありのままに風景を捉えているわけではない。
網膜で捉えた光刺激は外側膝状体を経由して後頭葉のV1野、V2野と続く。そこで背側経路と腹側経路に分岐する。V1、V2では主に光の明暗など低次元の処理を行い、背側経路は主に物体の位置、腹側経路は物体の形状を認識する。
更に細かく言うとV1、V2での腹側経路はblob経路とinterblob経路に分割され、interblobはより細かい縞模様を識別できる。

結果

ERP、VEP、DTIの研究を統合して分析。
ASD者の場合はV1においてinterblobの接続が強化されている一方、blobの接続は弱くなっている。背側経路については無傷。
また、V2以降の経路については全て弱くなっている。
これらの結果から、ASD者はコネクトパシー(機能的結合異常)であるといえる。

所感

完全に自分の学部卒業論文の結果を脳神経科学的に検証した実験。覚醒度がどうとか変なことを自分の論文では述べたけど、接続(コネクトーム)の問題に落とし込むとこうなるのかと感動している。
画期的論文だとは思うが、コネクトパシーという用語がそこまで普及していないのは残念。

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