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京都の劇団、「劇団三毛猫座」って?“音楽劇”を振り返る第6回

劇団員が三毛猫座の過去公演をご紹介する連載、第6回。今回は旗揚げ時より役者として参加している大塚が、少し懐かしい作品をご紹介します。
2017年度 第三回本公演「レモンの花の咲く丘へ」。
三毛猫座としては珍しいラブストーリー。そして唯一、オリジナルの楽曲がストーリーを形作る「音楽劇」として上演された作品です。

あらすじ

レモンの香りに満ちた南の国の館では、今宵、音楽会が開かれる。

最も美しい歌声を響かせた者への被け物は、美しい娘・イオリ。どこか自分の亡き妻に似ていると館の領主が連れてきた彼女は、<領主の思惑>を超えて館の運命を大きく変えていく。

そんな彼女にうっかり惚れてしまった領主の息子・フィドルは、音楽会に出て被け物を得ようとするが、突然現れた恋敵によって、<運命の波>に飲み込まれてしまう。

音楽会の顛末、そして館の運命は…。


2017年9月22日~24日
TORIIHALL(大阪・難波)


今は亡き領主の妻ビオラと、その面影を残すイオリ。彼女たちを中心に、館の人々の様々な想いが交錯する。

故人であるビオラはひとり寂しげに歌いながら機を織り、館の人々を見守っています。

音楽会に現れた謎の老人。イオリに興味を示す彼が訪れてからというもの、館には不穏な出来事が起こり始め...。

音楽

本作はアーティストを招聘して共に演劇作品を作り上げるプロジェクト「招猫企画」によるものです。参加アーティストは作曲家・後藤沙央里 さん。全編に渡って重要な役割を果たす印象的な楽曲を、全てオリジナルで作曲していただきました。

イオリのため、領主の息子フィドルが音楽会で披露しようとしている「死に行く人魚の歌」は亡き母ビオラから受け継いだもの。


かつてビオラの従者だったヒチリキは、不思議な夢の中で主人に再会します。二人が歌う「レモンの花の咲く国」は、どこか懐かしく優しいメロディー。ビオラの生前、彼女たちの幸せだった日々を思わせます。


老人の正体、魔法使いエフの歌には恐ろしい力が。運命を狂わせる不吉な魅力を楽曲で表現します。


伴奏はすべて生演奏!
アンサンブルの皆さんは館の楽団に扮し、舞台上で演奏しました。

舞台美術

地中海の白亜の館をイメージした一面真っ白なセット。限られたスペースに高低差を付けて奥行きや立体感を演出しています。

ベールに包まれたスペースは死後の世界を表現。ビオラはここから、残された人々の夢に現れます。

衣装

本作は、今では三毛猫座の作品に欠かせない存在、衣装作家の山下彩さんが初めて衣装を手掛けた本公演。
白い布の陰影が美しいこだわりの造形で、おとぎ話や神話のような世界を演出します。

とにかく照明が映えるんです!

従者たちの衣装の複雑なドレープはなんと全員違う形。

謎の老人とその正体、魔法使いエフの変身はベールとマントの付け替えで表現しています。

レモン色の生地に白いリボンが一本一本縫い付けられたビオラのドレスは機織りの糸をイメージしています。本作に多く登場する水の流れのモチーフも表現しているのかもしれません。

小道具

小道具も世界観に合わせた、豪華かつどこか素朴なデザイン。銀色に統一されていて、真っ白な衣装や舞台にマッチします。

宴の盃。なんとなくですが、注がれるのはぶどう酒のイメージ。

音楽会の勝者に贈られる月桂冠。本作のキーアイテムです。

最後に

いかがでしたでしょうか?
オリジナルの楽曲を作曲し「音楽劇」として上演されたのはこの「レモンの花の咲く丘へ」のみ。
一方で、この作品のビジュアルから劇団に興味を持っていただけることもあり、さらに2019年・2022年に上演された「くじらの昇る海底」など、三毛猫座は音楽を取り入れた作品を継続的に発表していきます。装飾的なビジュアルを特徴とし、他ジャンルとのコラボレーションを積極的に行う三毛猫座らしさをより一層確立した作品でもあるのではないかと思います。

記事中にも掲載しましたが、後藤沙央里さんによる楽曲の一部が現在も三毛猫座のYoutubeから視聴可能です。この機会にぜひ一度お聴きください。

◆死に行く人魚の歌 

◆レモンの花の咲く国 




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