即興演劇(インプロ)と、身体と心をひらくこと。
先日、インプロ(即興演劇)のワークショップに行ってきた。
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インプロとは
improvisation(即興)の略称で、即興演劇のこと。
演者たちが舞台上で脚本もセリフもない状況で、
お互いの発した言葉や動きを互いに受け入れながら展開していく演劇。
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最近知り合った人がインプロを習っていて
一度パフォーマンスを見て面白かったので、
自分でも体験してみたいなぁと思っていたところに
ワークショップのお誘いをいただいた。
二つ返事で行きます!といったものの、
前日に雪が降ってたし、めっちゃ寒い、出かけたくない・・・
体調もちょっと不安・・・ずっと立ちっぱなしだったらどうしよう・・・
(去年の入院で体力がめっきり落ちた)
初対面の人たちとその場でどんどん会話して演技して・・・ってそんなテンションになれない・・・でも行くって言っちゃったし・・・
こんなふうに、背景にどんより雲を背負ったような感じで出かけました。
●IMPRO KIDS TOKYO●
主催しているのはIMPRO KIDS TOKYOさん。
目の前の相手をリスペクトしながら進めていくインプロ(即興演劇)を
子どもたちへの教育活動に応用しているということで、
子どものいる参加者の方が多かった。
この日は、普段は保育園として使われているスペースを使い、
女性の講師2名、参加者8名(+お子様2名)でワークショップが行われた。
時間は3時間(座ったり休憩したりできます)。
料金は(この回は)寄付制でした。
●カラが割れたとき●
最初に自己紹介タイム。
ああ・・・みんな演劇とかしてそうな、活動的な感じの人たちだなぁ(よくわからない偏見)。
自分がここに来た理由も他の人と比べてぼんやりしてるし・・・
あかん、緊張するし憂鬱や・・・なんでここにいるんだっけ・・・
どんどん自分が閉じていくのを感じて、よくないなぁと思いつつもどうしようもない。
最初は「牛タンゲーム」みたいな感じで、
手を叩きながら他の参加者の名前を呼んで、
呼ばれた人がまた同じように手を叩きながら他の参加者の名前を呼んで順々にまわしていくアクティビティ。
すごくシンプルだけど、急に名前を呼ばれるとあせってスムーズに回せない。
そんな時、
「うまくできなくてあたふたした時は、その気分を押し殺さないで、
両手を挙げて、『う〜〜〜もう1回!』と言って開放してから、仕切り直して」という指示が入る。
・・・うわぁ、それ恥ずかしい。ものすごくやりたくない!!笑(心の叫び)
ただのゲームなのに、ますます
「間違いたくない、失敗したくない」という気持ちが強くなって、体に力が入るのを感じる。
でも、他の人たちはダメになったときにちゃんと両手を挙げて
「うわーーー」とかやっているから、
自分もまねして、こそっと小さく手を挙げてお茶をにごす。
それからまた、
「人は怖くなると、どんどん体を守ろうとして背中が丸まってきて、腕が前に入ってくるの。だから、思いっきり両手を挙げて胸を開くことで気持ちが仕切り直せるよ。犬がお腹をみせて降参するみたいに、大きく開いてみてね」とアドバイスを受ける。
バレたら仕方ない。笑
次に失敗したとき、思いっきり両手をあげて「わあ〜〜っ」と言って降参してみた。
そのとき、パリンッと小さくカラが割れたのを感じて、
気持ちと身体が一気に軽くなった。
周りからも「表情が急に明るくなった!」と言われて
嬉しいような恥ずかしいような。
胸を開く、声を出す、できないって認めてさらけ出す。
こんな小さなきっかけで心が開く。自分をおおっていたモヤみたいなものが晴れていく。
●動きをつけるとアイディアが湧く●
そのあとは、ひとりひとりが一分説だけことばを発してつなげていき、文章を作るゲーム。
(例;「今日は」「バレンタインデー」「だから」「チョコを」「デパートへ」「買いに」「行こう!」)
これは単語を言えばいいだけだから気が楽だなぁ(←何しに来たんや)
と思っていたら、
みんなひとこと言うたびに、演技的に声色を変えたり動作をくわえたりしている。
(ええ〜〜それ必要なの?)と思いつつ、
ちょっと自分も動きをつけてみると、
身体と頭がやわらかくなって、その架空の状況をリアルに感じられるようになってくる。
リアルに感じると想像がふくらんで、リズムに乗ってどんどん単語がつなげられるようになる。
ちゃんとその気になることで、自分の身体がその仕様に変わっていく不思議。
それと同時に、自分が普段どれだけ
自分自身を制御可能な状態においておきたくて、
体や心の動きを小さく硬く固めているのかを感じた。
もちろん、社会人としてそうふるまう必要がある状況も多いから
悪いことではないけれど、
それだけになってしまうと、たくさんの楽しさを跳ね返してしまって、
心の弾力性を失ってしまうなぁと感じた。
●怖さ、弱さがたくさんでてくる●
一番怖いなぁと感じたのは、「2人組を作ってください」と言われた時。笑
学生時代も、このフレーズが出るとクラスに静かな緊張感がピリッと走ったよね。
さらに2人組の作り方が「2種類」提示されて、これが難問だった。
1つめはこれ。
①ジャパニーズスタイル
あまり人と目を合わさずに、でもさりげなく周りの雰囲気を敏感に感じ取りながらうろうろと歩き、近くにいる人とチラチラと目線を交わし、
「あ・・・じゃぁ・・・」「お願い・・・します」「えへへ・・・」
みたいな、「ガツガツ探したわけではなく、あくまで自然にできあがりました感」を醸し出すスタイル。
これは超得意。笑 問題ない。
(でも、外国人がこれをやれと言われたら感覚がつかめなくて難しいのかも)
問題なのは2つめ。
②ピックミーアップスタイル
これは欧米的な方法。「私を選んで!」という満面の笑みを浮かべながら
他の人の顔をキョロキョロ見て、ばっちりアイコンタクトが取れたら
「よろしく!!」(握手!!)みたいな感じで組を作る。
「私を選んでね!」という満面の笑みを浮かべながら人の顔をまっすぐに見つめる。。。
ほ ん と 無 理
人の目をギリギリ見られるようになったのも去年のことなのに…笑
でもこれ、大丈夫な人にとってはなんでもないことなんだろうな。
結局、できたのかなんだかよくわからないままにペアを作った。
日常生活の中で、どんな状況を自分が恐れていて、いかに普段はその恐れを感じないように自分を律しているか。
そういうものがポロポロでてきてしまうのが、
インプロの怖くておもしろいところだった。
●演じるって楽しい!●
そんなワークを繰り返していくうちに、
だんだんとその場の雰囲気や周りの人たち、演じること自体に慣れていった。
最後には短い時間で即興芝居を何度かやって、
思いつかない〜〜とあたふたしながらも、
身ぶり手ぶりつけながら、その場その場で生まれる架空のやりとりを楽しんだ。(砂場でお城を作ったり、ぎっくり腰になったり・・・)
体験したことのない状況
言ったことのないことば
取ったことがないポーズ
そんなものたちが、周りとのやり取りを通じて自分の中から出てくるのは
愉快なものだった。
私は普段、ハプニングが大の苦手なので、(接客業はやりたくない)
即興的な状況を楽しめたのは新鮮で素敵な体験だった。
自分で全部決めつけずに
場にゆだねること、
相手を信頼すること、よく見ること、
自分から自然に出てくるものをそのまま出してみること。
そういう姿勢を身体を使って学ぶことができて、行ってみてよかったな。
お子さまがいる方(いっしょに参加できます)、教育にたずさわっている方、内にこもりがちでカラを破りたい方、純粋に演技を楽しみたい方などなど、
オススメでございますよ。