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農家に生まれた、いとこ兄弟のこと
私の母方のいとこに農家の長男と次男がいた。みけ子より数歳年上であったから今は60代の半ばである。昭和40年代頃の宮城の農家での生活は、若い人や男性は都会に就職や出稼ぎが一般的だった。
そのみけ子のいとこ兄弟も、長男は高校を卒業してから首都圏の工場に就職したかと思う。時計を作るメーカーであったが、時代は腕時計が主流になる時代で、置き時計を主に製造していたそのメーカーは時代の波に乗れず何年か後に倒産しちゃったらしい。
都会での就職はしたものの、就職した会社は倒産。実家の農家は長男として受け継ぐ必要があり、その後に長男は実家に帰って米農家を続けながら他の場所でも勤務するいわゆる「兼業農家」生活をしていた。
もう一人の弟の方は、家を継がないので農業からは離れて完全に就職する道を選んだ。この辺りはもう当時は「選択の余地なし」って感じで次男は家から出る道しか人生はなかった。
地元の役場職員などの公務員試験を受け、結局高校卒業後は自衛隊に入隊した。全国に転勤もあり定年年齢も他よりも若干若い。そんな点もあるけれど、全国を転勤して回りながら実家の農業には縛られない人生を送ることになった。
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時代は農業就業者には厳しい時代だったと思う。農業から得られる収入だけでは生活が立ち行かない。昔であれば長男の総領息子は大事にされ、土地と家を守りながら米や作物を育てて次世代に繋ぎ、老いてゆくのが一般的だったろう。だが産業構造が劇的に変化している時代だ。
先祖代々の土地から動けず、自由が効かずに一生生まれた土地を離れられない長男は、いつしか自由に全国を転勤して回る、自衛官である弟を嫉妬するようになった。
結局長男は、今から20年程前に病に倒れ帰らぬ人となった。確かまだ40代半ばだったんじゃないか。先祖代々の土地に縛り付けられた、自由にならない自分の人生を呪っていたのではないだろうか。晩年は弟である次男とは全く交流を絶ってしまっていたみたいだ。
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長男の死後は、残された家族が細々と農業を続けているようだが、その家の後継長男も積極的に農業を続けている感じでもなさそうだ。これまで丹精して収穫をもたらしていた農地は今後どうするのだろう?
農業が国の主要産業だった時代はもうはるか昔のことだ。産業構造が激変したとは言っても、農業とか食料の生産をないがしろにするのはどうか。だけど部外者である自分たちにはどうすべきかなんて分からない。
今は家を守ることや受け継いで行くことに対する縛りもだいぶ緩くなっている。少子化が進んで、先祖代々のお墓を「墓じまい」する家も多くなっている。
昔よりはずっと家や土地に縛られない自由がある。選択肢が増えた事を喜びつつ、今後の世の中の動向には注目したい。
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![櫻井みけ子久美](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/26424346/profile_1afa25caaa190f980ff008c5cef58e2c.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)